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[おとなのソロ部]京都「薫習館」のかおりBOXが話題! 日本の香文化と新たな出会い方ができる「香老舗 松栄堂」の情報発信拠点

地下鉄烏丸線丸太町駅からほど近く。「薫習館(くんじゅうかん)」は大通り・烏丸通沿いにあります。ガラス張りのモダンな建物の中は、スマホを片手に撮影を楽しむ若い人たちで賑わっていました。薫習館は「香老舗 松栄堂(こうろうほ しょうえいどう)」が和の香りの素晴らしさを発信する施設です。どのような展示があるのか、詳細をレポートします。

烏丸通沿いにあるモダンな施設。ここは何!? とひときわ目を引く「薫習館」

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地下鉄丸太町駅から徒歩3分。烏丸通を歩けば、ガラス張りで天井が高く、モダンな建物が見えてきます。
この建物は「薫習館」といい、隣に立つ「香老舗 松栄堂」が手がける日本の香りのすばらしさ伝える施設です。松栄堂は300年ほど前に創業。京都御所の主水職(もんどしょく)を勤めた3代目の頃「松栄堂」として本格的に香づくりに携わりました。以来、12代に至る今日まで薫香製造を生業としています。
お香の文化を守りつつ、時代を見据えた新しい香りにも挑戦する松栄堂。なぜいかにも老舗の風格を漂わせる本店の隣に薫習館を作ったのでしょうか。松栄堂の専務取締役 畑元章さんにお話を伺いました。

SNSをきっかけに若い人たちが訪れるようになった「かおりBOX」

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「香老舗 松栄堂」の専務取締役 畑元章さん

薫習館を開設したのは2018年のこと。開設する以前、本店に来店するのは松栄堂のファンばかりで、どのようにしたら松栄堂のことを知らない人たちにも日本の香りの素晴らしさを伝えられるのかを模索していたそうです。
そこで松栄堂は日本の香文化について広く深く触れられる情報発信拠点「薫習館」を開設しました。入場は無料。1階の展示フロアには「Koh-labo 香りのさんぽ」と名付けられた、さまざまな香りにふれられるスペースがあります。
しかしながら、隣の本店とはギャップのあるこのモダンな内装。開設当初はどんな施設かが道ゆく人には伝わりづらく、松栄堂の情報発信基地だということも気付かれぬままに、ただ見学していく人も多かったといいます。

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「かおりBOX」

そんななかでひとつのきっかけになったのは、あるSNS投稿。上記の「かおりBOX」の写真がアップされたところ、若い世代に一気に広がって、写真を撮りにくる人が激増したとか。この「かおりBOX」、顔がBOXにすっぽりと包まれて匿名性があるので、SNSのプロフィール画像に使う人も多いそうです。確かに「これ、どこ!?」と思わせるようなインパクトがある展示方法ですよね。
「かおりBOX」の中に入ると、日本古来の和の香りに包まれます。そもそも日本でお香が用いられるようになったのは、今から約1400年前のこと。当時は沈香や白檀といった香原料を直接火で燃やす「焼香」として使用されていたといいます。奈良時代には中国から香の配合技術が伝わり、平安時代には公家や貴族たちがお香を日常的に愛用していました。
「かおりBOX」は3つあり、匂い袋、練香、香木と3つの和の香りを体験することができます。「匂い袋」は白檀・丁子・甘松・竜脳などの常温で香りのする原料を刻んで調合した「匂い香」を布や紙製の袋に入れたもの。
「練香」は粉末にした各種の香料などに蜜を入れて練り上げ、一定期間壺の中で熟成させた丸薬状のお香のこと。「香木」はその名の通り、香りのする木のことで、白檀・沈香のことを指します。ぜひ3種類のBOXに入ってみて、和の香りのエッセンスを体感してみてください。

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こちらもちょっと不思議な見た目の展示。ちなみにバックにあるのは沈香が育つ、熱帯多雨林の写真です。この白い柱の筒は試香器になっていて、中には天然の香りの原料が入っています。

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試香器のポンプをプシュプシュしたら、原料の香りが試せるというもの。数千年もの歴史をもつ乳香(フランクンセンス)を嗅いでみましたが、森林を彷彿とさせるような清涼感と温かみをあわせもつ、うっとりするような香りでした。
また、ぜひ嗅いでみて欲しいのは麝香(じゃこう)。オスのジャコウジカの腹部にある香嚢(こうのう)から得られる分泌物なのですが、獣臭が強めで思わずむせそうになります。これがあの甘くて魅惑的なムスクの原材料だとは、ちょっと想像ができません。

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白いシリコンのボトルが並ぶコーナーにやってきました。ここはお香の調合を体験できるコーナー。ボトルには番号が振られていて、01は原料1種類の香り、02は同じ量の原料を2種類混ぜた香り、03は4種類の原料を混ぜた香り、04は10種類以上の原料を調合した香りです。
01から順番に香りを試してみましょう。香原料を混ぜることで複雑かつ深みが出てくる変化を感じ取ることができます。

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また沈香を実際に見ることができる貴重な展示も。木が折れた部分から地面へ向かって樹脂が沈着しているのが見てとれます。沈香はこの樹脂部分を香りの原料とします。沈香の木が育つのは、東南アジアの熱帯林地域が中心。高貴で深く複雑な香りは、森の奥底でゆっくりと育まれているのですね。

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エントランスの奥にある「松吟ロビー」はワークショップや展覧会などに幅広く活用されているスペース。取材時は松栄堂の匂い袋16種の香りを比べて、好きな香りに投票するという参加型の展示で賑わっていました。
展示手法がおもしろく、ずらりと並べられた立体三角の紙に入った香りを次々と嗅ぎながら、周りの人ともつい会話が弾むような和やかな雰囲気。和の香りの表現の豊かさを体感できるすてきな展示でした。

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こちらはエントランス付近にある人気のガチャガチャ「Kun Gacha」500円。 マシンは2台あり、匂い袋と火をつけるスティックタイプのお香の2種類があります。匂い袋は全3種、スティックタイプは全6種でどれが出るかお楽しみ。運よく当たりが出るとスティックタイプのお香や香立がもらえます。

隣接する「香老舗 松栄堂」で出合った、これぞ京都の香り

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「薫習館」から隣の「香老舗 松栄堂 京都本店」に続く通路がありました。

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いかにも老舗の風格がただよう京都本店の店内には伝統的な和の香りが並べられています。お線香や匂い袋のほか、香立や香皿などの道具類も豊富。

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「芳輪 白川」

数あるお香の中でおすすめなのが松栄堂の名物香「芳輪 白川」です。ふわりと広がる白檀の甘みとすっきりとした残り香が特徴。実際に香ってみた感想は、気品があり、どこか懐かしい香り。そう、京都の料理屋さんや旅館に泊まったときにふとただよう、あの香りです。まさか京都旅の記憶とともに刻まれた香りにこちらで出合えるとは思いませんでした。

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(左から)「薫路 雪柳」「薫路 甘露」ともにスティック20本770円、「芳輪 白川」スティック20本880円

右の「芳輪」シリーズよりも現代的な香りのラインナップが薫路(くんろ)。左の「雪柳」は甘く清楚な花の香り。清潔感のある明るい香りがふわりと広がります。真ん中は透き通る空のもと、甘やかな風が漂う風景を思わせる「甘露」です。いずれもとても人気があるそう。

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「Kohdion 香図(こうのず)」6820円

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