今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
腹を決める
今週のかに座は、最後に自分のもとに残るであろう感情に全集中していこうとするような星回り。
『死を怖れざりしはむかし老の春』(富安風生)という句のごとし。作者が92歳の年の早春に詠まれた一句。若かった頃はともかく、年老いた今となっては死が怖いのだという率直な気持ちがこめられています。
とはいえ、では若者はみな死が怖くないのかと言えば、そうではないでしょう。実際、1885年生まれの著者はその生涯で多くの戦争や関東大震災を経験しましたし、20代の頃には結核で職を辞し、サナトリウムで療養生活を送っていたこともありました。いずれも、間違いなく作者にとって死を強く意識する経験だったはず。
あなたもまた、そんな作者と同じく、できうる限り体面や世間体など捨て去っておのれの実存の行方をこそ追っていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
滅びの美学
今週のしし座は、ただ情欲を満たすのでなく、恋をした時の感覚を取り戻していこうとするような星回り。
仏教には「観想」というイメージトレーニングの瞑想修行の伝統があり、その中に人体が死後に膨張し、腐乱して蛆がたかり、野良犬やカラスに食い荒らされて、やがて白骨となるまでのプロセスを九段階に分けて観想することで、煩悩を防ぐというものがあります。
朽ちてゆく亡骸には、凄惨でありながらもどこか人を魅了する美しさがありますが、それは見る者がそうした死のプロセスに、自然へ還り万物循環をめぐらしていく上での、滅びの美学を重ねるからでしょう。
今週のしし座もまた、もしそうした瞬間に不完全燃焼に終わらないよう、悔いなく、今を完全燃焼させていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ふれあい
今週のおとめ座は、無言のうちに共鳴しあっていくうちに、関係が不意に深まっていくような星回り。
『受験期や少年犬をかなしめる』(藤田湘子)という句のごとし。
「かなしめる」は「悲しんでいる」わけではなくて、「愛しくする」の意。子供の受験に夢中な一家の誰からもかまわれずほっぽらかしにされている犬と、どこか蚊帳の外の置かれて疎外感を感じている少年とのあいだに、奇妙な友情ようなものが生まれているシーンなのだとも言えます。
あなたもまた、そうした奇妙で、でもどこかホッとするような関わりを大切にしていくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ごく平凡なことを成し遂げる
民藝運動の父・柳宗悦は、日本全国をめぐって各地の手仕事に触れた経験をもとに『手仕事の国』という民藝案内書をまとめ、そのなかで、彼は日本がいかにすばらしい手仕事の国であることへの認識を呼びかけましたが、同時に「工藝の美しさはどんな性質のものでなければならないのか?」という問いを立て、みずから次のように答えていました。
「どんな性質の美しさも、「健康」ということ以上の強みを有つことは出来ません。なぜかくも「健康さ」が尊いのでしょうか。それは自然が欲している一番素直な正当な状態であるからと答えてよいでありましょう。」
てんびん座もまた、柳が言わんとした「健康美」ということを、どこでなら成立させられるか、改めて考えてみるといいでしょう。