今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
狭く深く遅く
今週のさそり座は、時間の流れの速さではなく遅さをこそ愛でていこうとするような星回り。
『この谷の梅の遅速を独り占む』(高浜虚子)という句のごとし。
作者は「この谷」を空間としてだけでなく、時間の流れとして独占する、すなわち梅林が咲いていく喜びや充満するいのちの香りを全身で感受している気分に浸っていたのであり、それは最も深い愛情表現とも言えるのではないでしょうか。
あなたもまた、「下待つ」や「松が根」といった言葉を用いるのにふさわしい対象に、できうる限り全力で向き合っていきたいところです。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
偶然の個人化
今週のいて座は、自らの過去を振り返り、「他でもありえたかもしれない」地点にまで戻っていこうとするような星回り。
歴史学者・與那覇潤の『歴史が終わるまえに』を参考にすれば、20世紀半ばまでは人類が資本制を捨て共産制へと進んでいくことを必然とする「歴史観」が当り前のように前提とされていたのが、米ソ冷戦期の後半から次第に市場競争に基づく新自由主義への転換こそが時代の必然とされるようになっていき、21世紀頭にはそれが広くコンセンサスを得るようになったのだと言います。
しかし、そうした歴史観をこんにち素朴に信じている人はもはやほとんどいないでしょう。歴史の必然化につぐ必然の個人化が進むにつれて、他者に対する共感や慈しみを失わせていった結果、そこを越えたらもう社会という共同性を営めなくなる臨界点へと日本社会はもうとうに達しているのかも知れません。
あなたもまた、物事や人生にあまりに「一貫したストーリー」を求めすぎるのをやめ、「生まれのたまたまや、出会いのたまたまからこそ、むしろ濃密な意味が立ち上ってくる」という観点に改めて立ち返ってみるといいでしょう。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
まず虚に居る
今週のやぎ座は、自身や周囲の好機嫌を育てる言葉を発していこうとするような星回り。
『狙(さる)も来よ桃太郎来よ艸(くさ)の餅』(小林一茶)という句のごとし。
ここで思い出されるのは、俳句の極意について語った松尾芭蕉の「実に居て虚にあそぶ事はかたし」という言葉。“遊ぶ”とは、俳諧の自在な境地で言葉を繰り出していくことを言うのですが、本当は心で感じているものなんて何も無いのに、言葉や現象をこねくり回して情趣らしきものをでっちあげたらダメだ(かたし)と言っているんです。
あなたもまた、自身がまず「虚に居る」という感覚を深めていくところから始めてみるべし。