こどもを応援するチーム
星野 教員も保護者も「こどもに幸せに育ってほしい」と願っていて、こどもの健やかな育ちを応援するための一つのチームですよね。それぞれ考え方は違っても、目的は同じです。
クラスはこどもの「集団」ですが、保護者の「集団」もとても重要です。なぜかというと、親同士が知らないままだと、こどもの断片的な話だけで「あの子は◯◯だ」といった決めつけを家庭でしかねない。親の言葉がこども同士の関係に影響を及ぼして亀裂が入ります。
田房 保護者会は、誰がどの子の保護者かを知る機会になりますよね。絶対に知っておいたほうがいい。ただ、自己紹介をやりたくないという要望が多いとも聞きますが、本当ですか?
星野 本当です。自己紹介が苦手だという声があったので、グループディスカッションに変えたら、数人の親から「知らない人たちの中で話すのがしんどかった」とフィードバックがあり、今度は私が一方向的に話すコミュニケーションに戻すなど、試行錯誤の連続です。
自己紹介をする代わりに、好きなものを書き合う「偏愛マップ」をつくったこともあります。保護者会ではこどもの話になりがちですが、「親」としてではなく「個人」でいられる場にしたいと考えたからです。「◯◯の親です」ではなく、下の名前で名乗ってみてはどうかと提案したこともありました。
一線を引くべきか
星野 先ほど「教員」「保護者」という肩書きではなく人間同士として、という話があったように、親同士も「保護者」ではなく人間としての面をもっと見せてもいいと思うのです。
それは結果的に、こどもの関係性にも影響します。もしこどもがケンカをしたときに、相手の親がどんな人かがわからないと、不安が敵意に加速してこじれることがあります。けれども、人となりがわかると、一呼吸おけます。
一方で、教員と親は一線を引いたほうがいいという考え方もありますよね。
田房 「モンスターペアレント」対策などの背景もあるから、あまりに距離が近いと先生の負担が増えてしまいますもんね。
逆に、先生や保護者たちが互いにしっかり距離と節度を持って接してくれているおかげで、私は「もっと人間同士としてつながったほうがいいのに」と思うくらい余裕を持てているんだなということに今、気付きました。
▶︎ 次回の【先生と保護者のチャット】では、「学校の中のジェンダー」について考えます。
※ ネウボラ = フィンランド語で「アドバイスの場」という意味。妊娠期から子育て期まで切れ目のないサポートを提供する自治体が日本でも増えています。
特集「6歳からのネウボラ」 / OTEMOTO