今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
チンしてやわやわにする
今週のかに座は、固いものが一瞬で柔らかくなる詩的反転に立ちあっていくような星回り。
『風立ちて月光の坂ひらひらす』(大野林火)という句のごとし。「月明かりの下でひらひらする坂」という光景には、どこか「可笑しみ」が感じられますが、それは人間的な滑稽というより、笑いの前の「ずれ」から生まれたもの。
すなわち、異なる周波数の波が重なったときのウワーンという「うなり」のような現象に近く、固いものが一瞬で柔らかくなる詩的反転においては、しばしばそういう感情レベルのゆらぎもまたひき起こされてくるのかも知れません。
あなたもまた、これまで自分の中で確かに思われてきたものが夢のように揺らぐという体験を、どこかでしていきやすいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
切断しないでいること
今週のしし座は、自分にはさっぱりわからない相手の元に、そうであるにも関わらず留まり、理解していこうとするような星回り。
親子であれ恋人であれ、私たちは当然のようにお互いのことを分かり合えているかのように振る舞いがちですが、そうした“ふり”はもういっそ止めてしまってもいいのではないか。一読してそんな風に思わせてくれるのが、精神科医オリヴァー・サックスの『火星の人類学者 ―脳神経科医と7人の奇妙な患者―』であり、その中にアスペルガー症候群のテンプル・グランディンという女性の生活を描いた同名のエッセイがあります。
フィールドに出向いた研究者というのは、得てして孤独な存在です。まして相手が何を考えているかなど、及びもつかないわけで、グランディンはそうした状況の極限相に自分はいるのだと言いたかったのでしょう。
あなたもまた、他人のことなど本来さっぱり分からないものという前提に立ちつつも、改めて“フィールドワーク”の対象を思い定めていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
愉快と忌避が入り混じる
今週のおとめ座は、二律背反のワルツを踊っていくような星回り。
『黒猫の子のぞろぞろと月夜かな』(飯田龍太)という句のごとし。
掲句は「純粋無垢な福々しさ」だけでなく「暗く深い闇の底知れなさ」にも彩られており、もしかしたら作者が真に驚いていたのは、そうした陰と陽とがきれいには和合しきらない同居ぶりに対してだったのかも知れません。
あなたもまた、互いに矛盾しあう二つの原理やエネルギーの在り様が不思議と同時に成り立っていくような場面に立ちあっていきやすいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ここぞと手足をバタバタす
今週のてんびん座は、「人生そんなものだよな」とこぼしつつ秋風なびく原っぱを恬淡と散歩していくような星回り。
「自己承認欲求」という言葉をよく聞くようになった、と橋本治が書いていたのは、2017年になったばかりの頃のエッセイでした。
相手がいなくても勝手にできるのが「自己主張」なのに対して、自分を認めてくれる相手を必要とするのが「自己承認欲求」。そうすると自己承認欲求というのが当たり前のように広がっているということは、誰もがみな「私は認められてしかるべき」だと思う根拠を勝手に持っているということで、橋本は、そうして主張する側ばかりが増えると、誰が承認側をやってくれるんだろうか、と畳みかけます。
あなたもまた、まずは他者からの「いいね」「承認」ではなく、自分の身体感覚やリズムに根差した「満足」を取り戻すことから意識してみるといいでしょう。