ガラス製品でありながら、柔らかさやあたたかみが感じられるアイテムを見つけました。硝子作家の今村知佐さんが作る蓋つきの器です。透明や白、模様を刻むことで白や半透明になったものなど。さまざまな表情を持つガラスと、真鍮や木で作られた蓋の組み合わせは、置くだけでその場を和ませてくれるやさしさがあります。
透明や白色のガラスに模様を刻んだ、やさしげな器
吹き竿に溶けたガラスを巻きつけ、息を吹き込んで成形する宙吹きガラスで食器や花器などを制作する今村知佐さん。出来上がったガラスは、透明なものだけではなく、曇りガラスのように半透明のものや、白く色をつけたものも。さらに、機械やペンのような工具で表面を削り、模様を描いたものもあります。
「透明と不透明の間で見つけられるガラスのおもしろい表情を引き出せたら」という今村さんの言葉どおり、表情豊かなアイテムが数多く生み出されて人気となっています。
異素材の蓋がセットになった小物入れ
中でも私が惹きつけられたのが、蓋つきの小物入れです。かつて金属工芸を学んでいた今村さん自らが真鍮で作る蓋以外に、最近では木製の蓋のケースも登場。木工作家のうだまさしさんが作る蓋の上に、今村さんが真鍮で制作したつまみがついています。そのつまみが木の実や双葉などの形をしていて、どれを選んだらいいのか迷ってしまうほどの可愛らしさ。
冷たくて硬質なイメージのガラスが、今村さんの手によって、異素材と組み合わさることで、あたたかみのあるものになるから不思議です。
ガラスの色や形、蓋のつまみ、どれにも個性が光る
最初にご紹介するのは、真ん中あたりがぷっくりと膨らんだフォルムに目を奪われるデザイン。透明な本体に雨のように散った細かなラインの模様が、ガラスに軽やかさを添えています。ノミで丁寧に彫られた木の蓋にちょこんと載ったこんぺいとうの形のつまみがアクセントに。
中に色とりどりのこんぺいとうや飴玉を入れれば、テーブルの上が華やかな印象になりそう。
丸みのあるガラスに、縦や横に淡い白色の筋が入った器は、雨や雪の日の曇った窓ガラスや、その向こうに見える霧や雪の光景を思い起こさせます。美しく波打つ木製の蓋の上のつまみは、植物の実の形。写真左側の花の蕾にも見えるつまみはヒメシャラ、右側のぷくぷくと立体感のあるものはヤマボウシです。本当の実から型をとって作られているそうで、まるで本物のよう。
そのまま飾っておくだけでも、部屋のアクセントになりそうですが、大切なアクセサリーなどのほか、旅先で拾った貝殻や木の実などを入れて思い出を保存しても素敵です。
こちらの小物入れは、円柱の形をしたガラスの真ん中に白いラインが引かれ上半分は透明、下半分は淡い白色になったもの。吹きガラス独特のレトロな質感と、様々な技法を駆使した磨りガラスの繊細さを同時に楽しめる、今村さんらしい作品です。まるで畑の畝のような凹凸がついた木の蓋と、そこから顔を出す双葉にも、遊び心が感じられますね。
イベントや個展に登場予定なのでチェックを
蓋にはつまみがないシンプルなものや、木の部分が楕円形のものなどさまざまなデザインと形があります。ただし、常設店舗はなく、個展などで用意できるときだけの販売だそう。
ガラスの模様と、蓋のつまみの形はいろいろなバリエーションがあるので、好みの組み合わせを探してみてください。
今村さんは、9月29日(日)・30日(月)に広島県呉市の蔵本通り公園で、ガラスパーツと木の実や貝殻などで吊り下げオーナメントを作るワークショップを行う予定。また、10月6日(日)〜12日(土)には千葉県八千代市の雑貨屋さん「ブロカントチェア」で個展を開くそう。ただ、木や真鍮の蓋のついた小物入れの制作予定は年末以降とのこと。Instagramに作品の情報がアップされるので、ぜひチェックしてくださいね。
photo / 今村知佐
今村知佐