整理収納コンサルタント・須藤昌子さんの希望は、光が抜ける開放的な家。ガラス床や吹き抜けを通って、光が家中を回遊する。
「家中のどこにも、暗く、じめじめしたスペースがないんです。明るく開放的に暮らせるのが、何より家を建ててよかったと思うところですね」。
そう語るのは、整理収納コンサルタントとして活動している須藤昌子さん。9年程前、家族3人で暮らす2階建の一戸建てを設けた。
「3分割されて売っていた土地を見つけ、ネットで探した一級建築士事務所に相談しました。隣家に接した土地なので、ここにどんな家が建てられるのかと思いましたね」。
須藤さんの希望は、光の入る細かい仕切りのない家、そして収納にも配慮した家にしたいということだった。
「それ以外はあまりリクエストしませんでした。プロの先生にお任せしたほうが、いいものになるのではないかと思って」。
光に満たされた家は、優秀建築物として「第20回千葉県建築文化賞」を受賞。リビングの吹き抜けを取り囲むように、仕切りをできるだけ排した空間がつながり、“ガラスのブリッジ”と名付けた2階のガラス床を通って、トップライトからの光が1階へと抜けている。
2階の廊下から1階リビングを見下ろす。“ガラスのブリッジ”は、まるで空を渡るような感じからネーミング。トップライトやバルコニーからの光が1階まで届けられる。
螺旋階段を採用して、階段を抜けのある空間に。開口の代わりにプロフィリットガラスで外からの視線を避けつつ、光を通している。
ガラス張りの吹き抜けテラスでは、いずれガーデニングも行う予定。廊下突き当たりの扉の奥は、玄関からもつながっているシューズクローゼット。
ガラスのブリッジを通って居室に。右手にバルコニーに上がる階段がある。
吹き抜けを介して光が回遊。隣家から見える左手の一角にはルーバーを設置した。
琉球畳を敷いた和室からリビング方向を見る。
「正面にはアパートが建っているので、そちら側には窓など一切ないんです。左右に建つ隣家からの視線も避けながら、うまく開口を設けて、明かりをとっています」。
玄関を入るとガラスに囲まれたウッドデッキのテラス。その向こうに大きな吹き抜けのあるリビングがある。
「海外からお客さんがくることも多いし、いずれ両親を迎えることになるかもしれないので、畳の和室を設けました。今は引き戸を常に開放して、リビングの延長として使っています」。
開放的な上にすっきりと美しいのは、「モノを出しっ放しにしない」という須藤さんのルールが生きているから。
「家を建てる前に住んでいたところは、押し入れが狭くて。戸建てを建てたら何とかしたい、というのがありました。庭があって物置を置けるわけでもないので、掃除道具や工具、生活必需品などすべてを収められる“シューズクローゼット”をリクエストしました」。
玄関からもリビングにつながった廊下からも入れるよう動線を考えたストレージが、特に役立っているそうだ。
床材はサクラの無垢を採用。エアコンも見えないように目隠しされている。
白い空間にインテリアでアクセントを。塗り壁に見えるよう極力薄い壁紙を選び、職人の技で施工。
開口の位置に工夫が凝らされた和室。黒い壁紙が印象的。
「モノを置かない」ことに徹したダイニング。テーブル上は常に最低限のモノのみ。
外からの視線を遮りながら、明るさで包んでくれるリビング。
「お料理をしながら、家族とコミュニケーションがとれるので、キッチンは対面式を希望しました」。
キッチン台の前にはカウンターを造作。毎日帰宅の遅い夫が夕飯をとるのに、サーブしやすくて便利なのだそう。また、キッチンまわりでの作業が多い須藤さんにとって、大事なのがキッチンの奥にある“家事ルーム”。
「パントリーでもあるのですが、私の仕事部屋でもあるんです。棚だけでなく机も造作してもらって、ここで毎朝ブログを書くなど、仕事をしています」。
仕切りの引き戸はツインカーボを使っていて、戸を閉めて中に籠っても、やはり光が抜けるようになっている。
「お風呂はいろんなパターンを考える中で、ホテルっぽくすることに決めました。ガラス張りの真っ白な空間だけに、きれいにしておかないと汚れが目立ってしまいます。お掃除の手は抜けませんが、常に清潔に保てるので良かったと思っています」。
対面式のキッチン。収納などは使いやすさを考えて造作した。
掃除のしやすいステンレスのキッチン台。大きなシンクに付いているトレーの上では、パンをこねたりもでき、さらにそのまま洗えて便利。