「差し出がましいようですが……」という表現を聞いたことはないでしょうか。「差し出がましい」という言葉はそもそもどういう意味を持つのか、どんな場面で使われるのか、類義語には何があるのか、国語講師で『美しい女性をつくる言葉のお作法』(かんき出版)著者の吉田裕子さんに解説してもらいました。
「差し出がましい」は、打ち合わせやメールなど、ビジネスシーンでよく使われる表現です。会話の潤滑油である「クッション言葉」として使われることもあれば、謝罪や忠告で登場することもあります。
「差し出がましい」という言葉はそもそもどういう意味を持つのか、どんな場面で使われるのか、類義語には何があるのか、確認していきましょう。
そもそも「差し出がましい」の辞書的な意味は?
「差し出がましい(さしでがましい)」の意味を辞書で確認すると、次のような意味です。
・「必要以上に、他人のことに関与しようとする。出過ぎた感じである」(小学館『デジタル大辞泉』)
・「分をわきまえずにでしゃばったことを言ったりしたりする様子だ」(三省堂『新明解国語辞典』)
「差し出がましい」の元は「差し出る」という動詞で、地位や立場を越えた言動をすることを意味しました。そこに接尾語「がましい」がついて形容詞になったものです。
本来の役割を越えて、しゃしゃり出てしまうことを意味するので、ネガティブなニュアンスの単語です。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンにおける「差し出がましい」には、大きく3つの使い方があります。
(1)目上の人に対するクッション言葉
目上の人に対してお願いをするとき、また、目上の人に意見・異論を言うときに、クッション言葉として使います。失礼になりかねない依頼・苦言の直前に「差し出がましいのですが」と付けることで、遠慮する態度を示すのです。
なお、「差し出がましい」自体はただの形容詞で、敬意などは含まれないので、丁寧語「です」「ます」や謙譲語「申す」と組み合わせて使われます。
例文
・「差し出がましいお願いですが、改めてご説明いただけないでしょうか?」
・「差し出がましいようですが、議論が本題からそれています」
・「差し出がましいことを申しますが、現在のやり方を見直す時に来ているのではありませんか?」
(2)目上の人に対する謝罪
身の程をわきまえずに暴走したり、失礼な発言をしたりしたことを謝罪するのに使います。自分が間違っていたことを認める表現で、謝罪の言葉と合わせて使います。
例文
・「差し出がましいことを致しました。お詫び申し上げます」
・「申し訳ございません。差し出がましい真似でした」
(3)目下の人の出過ぎた言動を注意する
後輩や部下に対して「差し出がましい」を使うのは、主に、彼らの失礼な行為を注意するときです。立場や役割をわきまえない言動を「差し出がましい」という表現でたしなめます。
例文
・「お客様の好みを否定するなんて、差し出がましいことです」
似た意味を持つ言葉
「差し出がましい」と似た意味の言葉を紹介します。同じメールや会話の中で、何度も「差し出がましい」を使うのはしつこくて不自然なので、言い換え表現も覚えておきましょう。
(1)「厚かましい」
恥知らずで遠慮がないこと。無理を言うとき、図々しいお願いをするときによく使われます。