無料の会員登録をすると
お気に入りができます

これって方言? 「せわしない」の本当の意味

エンタメ

「“せわしない”という言葉は方言だから、全国的には通じない」と思っている人も多いのではないでしょうか。「せわしない」の意味や、「せわしい」との違い、使い方や類語について、ライティングコーチの前田めぐるさんに解説してもらいました。

ところが、2004年刊行の『標準語引き 日本方言辞典』(小学館)には、方言ではなく標準語の側に「せわしない」が記載されているのです。

【せわしない】
あせない(富山県)。からせわしー(山形県東置賜郡)。
(佐藤亮一 監修『標準語引き 日本方言辞典』第1版、小学館、2004年)

つまり、「標準語の“せわしない”を方言で言うとこうなります」と示されているわけですね。

しかし、同じ監修・編集者による2010年刊行の『都道府県別 全国方言辞典』(三省堂)では、大阪府や山形県(内陸部)の方言として「せわしない」が記載されています。

【せわしない】(大阪の方言)
忙しい。

【せわしない】(山形県内陸部)
うるさい。忙しい。
(佐藤亮一 編『都道府県別 全国方言辞典』第2刷、三省堂、2010年)

このように、方言についてはさまざまな研究者により調査が重ねられているものの、その変遷は複雑です。

総合的に判断すれば、

・北陸から東北で使われていた方言の「せわしない」が、いつしか標準語として市民権を得るようになった

・大阪や山形では方言の要素を持ちながらも今に至る

と考えられます。

『広辞苑 第七版』にも記載されており、全国的に使っても通じる言葉といえるでしょう。

「せわしない」を使う場面と使い方(例文)

picture

「せわしない」は、例えば次の3つのような状態・状況を表す場合に使います。

(1)やることが多くて、暇がない。いそがしい状態。

(2)物事の動きや流れが急なこと。

(3)人の動作や話し方、雰囲気が落ち着かない様子。

いずれも、本当にいそがしい、落ち着かない様子を表します。

では、実際にどんな場面で使えるのでしょう。

(1)「やることが多くて、暇がない。いそがしい状態」を表す場合

(転勤した上司へのメールで)
・新天地はいかがですか。こちらはみんな相変わらずせわしない日々を過ごしております。

(繁忙期で忙しい時に)
・4月は新人指導など何かとせわしない時期で、なかなかそちらへ伺うことができません。

(2)「物事の動きや流れが急なこと」を表す場合

(急激な環境の変化により)
・法改正に対応すべく、この業界も例年になくせわしない状況です。

(市場への動向により)
・A社の破綻報道で、弊社の関係部署が一気にせわしなくなってきました。

(3)「人の動作や話し方、雰囲気が落ち着かない様子」を表す場合

(話し方が早口な人に対して)
・Kさんの話し方はちょっとせわしないですね。

その他、プライベートな場面でも次のような使い方ができます。

・元気ですよ。せわしないのは変わりませんが。

・今年は夏以降ずっとせわしなくて、ゆっくり休みが取れない。

なお、上記の「せわしない」は全て「せわしい」とも表せます。

「せわしない」の類語

picture

「せわしない」の類語には、以下のような言葉が挙げられます。

オリジナルサイトで読む
記事に関するお問い合わせ