今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
意味が無意味に浸食される
今週のかに座は、現実をその本来のやわらかさそのままに受け止めていくことに、精を出していくような星回り。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に、アリスがチェシャ猫に道をたずねる有名な場面があります。7歳の迷子の少女に対するものとしては冷たい返答のように思いますが、あまりに真っ当に答えようとすると逆にナンセンスに変貌して笑いを誘うといういい例でしょう。
あるいは、もしかしたらチェシャ猫はアリスが本当は自分のしたいことがはっきりしていないのを見抜いていたのかも。その状態で親切に道案内をしたり、お節介を焼いてしまえば、アリスの内発的な“したいこと”の現われをかえって妨げていたでしょう。
説明もせず、言い訳もせず、笑いだけを残して消えるくらいの、弱い関わり方くらいが、アリスというまだ物事のかすかな萌しのような存在にとっては、ちょうど良いのかもしれません。あなたもまた、自分なりの自然な仕方で人や社会に貢献していく上での美学を改めて追求していきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ピカピカの命そのものになる
今週のしし座は、幸福であるか不幸であるかなどわきにおいて、ただ心を澄ませていくような星回り
「虫の音の真直中に杖を止め」という句を詠んだ緒方句狂は、三十歳の頃に失明してから俳句を始め、その後の盲俳人の嚆矢となりました。彼の天地においては、ただ虫の声だけが鳴り響いており、自分が立っている場所をその「真直中(まっただなか)」とずばり言い得ている訳で、それがこの句の生命をなしています。
作者の歩いた道は人一倍苦しい道だったに違いありませんが、盲目になったことが不幸か幸福かについては、思わなかったのではないでしょうか。彼はただ与えられた常闇の世界に住み、静かに句を作り、それをおのれの命としてしていったばかりであったはずです。
今週のあなたもまた、まわりから照らされ、持ち上げられることをただ待つばかりでいるのではなく、みずから光を発していける場所にまず立ち続けていくことを意識していくといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
捨て身と居場所
今週のおとめ座は、闇を感じるこころを深めていくような星回り。
人は本来、狩られるべき獣に殺され、喰われることだってありうる立場の存在です。しかし私たちは自然の食物連鎖など知らずに金銭で獣や魚の肉を買い、安全な場所で食らう。もちろんそれは町にいれば当然のことではあるのですが、そんな生活を続けていれば、自身もまたいのちの枯れた死に体に近づいていくのも自然な成り行きではないでしょうか。
ある狩人は、数百メートルも離れたところから、ライフル銃で熊を撃つことを指して「忍び撃ちは卑怯だ」と語ったそうです。彼らの中には、賭けにも似た、捨て身の贈与を介して初めて成り立ついのちの思想が息づいているのでしょうし、これは先の俳人の境地や「闇の感覚」にも通底しているように思います。
今週のあなたのテーマは、自分が捨て身で居られるフィールドを見出していくこと。そこにこそ、今後歩んでいくべき道が広がっているように思います。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
裏山を駆けまわる
今週のてんびん座は、自分を自由にしてくれる魔法を、みずからにかけていくような星回り。
「蜩といふ名の裏山をいつも持つ」(安東次男)という句で描かれている「蜩(ひぐらし)」。その実態や鳴き声は現実のものではなく、回想のなかのものでしょう。実際に「裏山」そのものを「いつも持つ」ことはできませんから、この表現には俳句らしい滑稽味や遊びの精神が生じてくる訳です。
故郷を離れて暮らす都市生活者にとって、故郷の自然や昔慣れ親しんだ風景というのは特別なものがありますが、この場合の「裏山」とは、そうした故郷の原風景の象徴。夏の終わりを告げる蜩の鳴き声が聞こえてきたとき、時空を超えて意識が結びついてしまう心の安息地なのだと言えます。
今週のあなたもまた、自分が最もいきいきとしていた頃と現在とを時空を超えて繋ぎなおしていくことで、ある種の生き返りを経験していくことができるはず。