今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
メイク・ユートピア
今週のかに座は、自分がまっとうでいられるユートピアを、恬淡と見定めていくような星回り。
『水木しげるのラバウル戦記』は若かりし頃の水木さんの過酷な戦争体験記であると同時に、戦地なのに読むと行きたくなるという意味では、優れた紀行文とも言える不思議な一冊。派兵先で上官にひっぱたかれてばかりだった水木さんですが、なぜか原住民たちには好待遇を受けて友情を育んでいきました。
おかしな奴だと思われていた水木さんがただ一人まっとうな人間であることを、きっと原住民は肌で感じ取っていたのではないでしょうか。水木さんは自分を理解し、受け入れてくれた彼らと牧歌的な日々を過ごし、戦争が終わって船で島を離れる時も、帰れる喜びでみなが泣いている中、ひとり本気で原住民たちと別れることが悲しくて泣いていたんだとか。
今週のあなたもまた、日常がすでに非日常化している現在の社会のような状況下で、誰とどんな状況でいる時に最も「まっとう」な自分でいられるのか、改めて実感していくことになるはずです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
時代の車輪を回すため
今週のしし座は、時代や社会にそっと寄り添っていこうとするような星回り。
「冬蜂の死にどころなく歩きけり」(村上鬼城)という句に登場する、いまにも死にそうなほど衰えていながらも、死なずに歩いている一匹の蜂。これをあえて作者と切り離し、「冬蜂」を死にたくても然るべき死に場所を見つけられない、旧時代の残影だと考えてみることはできないでしょうか。
ここのところ占星術の界隈では、しきりに「2020年の年末には風の時代に切り替わる」ということが言われています。これはグレートミューテーション(大変移)といって約200年ごとに起きる占星術上の時代の移り変わりが起き、これまでの「土=目に見える資産、成果、豊かさ」が基準となっていた時代が終わって、「風=情報、繋がり、自由」の時代へと変わっていくという理屈。
そうした時代の要請に応えて、土の時代を終わらせていくためのアクションが少なからず連鎖していく必要があるはずです。あなたもまた、どこか無意識のうちに言葉や行動に組み込んでしまっている、終わらせるべき「土の時代」の残滓について浮き彫りにしていくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
運命との直面
今週のおとめ座は、もう一人の自分の姿を誰かどこかに見出していこうとするような星回り。
岡本かの子の短編小説『秋の夜がたり』は、中年の両親が20歳前後の息子と娘に旅先で昔話をしているという設定で始まるのですが、いわく二人の母親は女友達で、たまたまそろって妊娠中に夫を亡くし、父親は女の子として、母親は男の子として育てることを合議して決めたのだと言うのです。
やがて男の子として育てられていた母親が初潮を迎えると、母親たちは事実を子供たちに伝えます。しかし「なぜ」ということを聞き出すこともできず、それを受け入れて成長。その後二人はそろって都を飛び出し、田舎で自然と元の性にかえり、そこで夫婦として暮らすようになったのだとか。
翻訳家の脇明子さんは、「この女装の男の子もやっぱり少女なのではないか」と指摘。物語全体が「女はこうあるべきだという通念に従いながらも、そこにおさまりきらない心」を複数の人物(両親、娘、息子)に分裂させて描くために書かれているのではないかと続けているのです。あなたも一見関係ないように見えつつも、実のところ自分の分身でもあるような他者との関わりに積極的に巻き込まれにいくといいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
漸進的調和
今週のてんびん座は、モチベーションを自分自身で高めていこうとするような星回り。
それはまるで「飛鳥仏けふも面長大根(だいこ)干す」(斉藤夏風)という句のよう。6~7世紀に作られた「飛鳥仏」は最古の部類にあたる仏像で、特徴としてアーモンド形の大きな目やくっきりとした大きな鼻などのイメージが浮かんできますが、言われてみれば確かに飛鳥寺の飛鳥大仏を始め、どれも面長の顔をしています。とはいえ、これは日常的にその顔を拝んでいるからこその着眼でしょう。
何度も見ているうちに、何とも言えない愛着がわいてきた訳です。そこに初冬の季語である「大根干す」を添えることで、自然と日々の労働や家事などのルーティンをこなすリズミカルな動きが重なりあっていく。その中には、やはりはじめは何で自分がこんなことをとあまりいい気持ちがしなかった動きもあったかもしれません。
今週のあなたもまた、自分の日常に特に弾みをもたらしてくれているルーティンに、改めて意識的に取り組んでいくことで創造性を高めていきたいところ。