「年齢を重ねたら、セックスはしないもの?」答えはNO。いくつになっても楽しく、健やかな性生活を送りたいと思うのは、当然のことです。だけど実際は、年齢による体の変化などで若い頃のようにセックスできない、セックスが痛い、セックスが怖いといった悩みも少なくないようです。性の健康に関するアクティビストでありメノポーズカウンセラーの小林ひろみさんに、40才からの性生活をより良いものにするためのアドバイスをいただきます。
今まで性交痛を感じたことなかったのに、近ごろ痛みを感じるようになった。40代以降の女性からそういった声を聞くことがあります。性交中に「あれ?」と思っていても、よほど痛くなければ忘れてしまいがち。また痛みを忘れてなかったとしても、「『セックスが痛い』ぐらいのことでわざわざ婦人科に行くなんて」と放置したり、「年のせいかも、これを機会に卒業だ」とセックスを遠ざけてしまう人もいるのでは。腟分泌液が減った自覚があり、潤滑剤などの活用で解決すればよいのですが、それでも痛みが継続する場合は、「様子をみよう」とそのままにせず、からだの声として捉えてみることをおすすめします。
セックスの時に痛みを感じるのは病気のサイン?
私もどちらかというと「セックスの時だけの痛みだから」とできる限り我慢してしまうタイプでした。婦人科に行くのは、歯科に行く以上に気が重くなる医療機関。私に限らず、多くの女性が「できれば行きたくない」ところではないでしょうか。しかし、40代以降に始まった性交時の痛みは婦人科系疾患のサインかもしれません。普段、直接触れることがない内性器を誰かに触れられる、振動を与えられるセックスでは、「病気がここにあるよ」と気づかせてくれることもあるのです。特に婦人科系のがん、子宮筋腫、子宮内膜症などは、奥や下腹部が痛む場合が多いと言われていますが、痛い場所に関わらず、痛みがあれば注意をしてください。閉経が近づく年代は、女性ホルモンの減少がはじまり腟内の自浄作用の低下が始まります。外部からの雑菌で炎症も起きやすくなる傾向にあり、今まで女性ホルモンで守られていた婦人科系の健康は、自分で意識して守っていかなければならない年代に入ります。
どう意識して婦人科系の健康を守るのか。やはり婦人科検診です。「閉経したら婦人科は必要ない」と思っている方も実はいらっしゃるのですが、それは誤りです。通いやすい婦人科のかかりつけ医を今のうちに見つけておき、年に一度は定期検診を受けることをおすすめします。性交痛がある場合は、検診の有無に関わらず、自己判断せず、痛いことを医師に伝えて受診してください。特に問題なければ、ここで初めて「セックスの卒業/継続」の判断もご自身の気持ちを大切にしながら選択できるのです。
アレルギーの可能性も
婦人科系疾患のサイン以外では、ラテックスアレルギーも考えられます。天然ゴムに含まれるラテックスタンパク質が引き起こすアレルギーです。COVID-19の影響で、ゴム手袋の着用が義務化される職場もあり注目です。このアレルギーはゴム製品に接触して肌が赤くなる、かぶれる、かゆくなるなどの皮膚障害を起こします。まれにですが、重篤なアレルギー症状を引き起こすことも。今までラテックスアレルギーがなくても、天然ゴム製のゴム手袋などの常時着用などゴムと肌の接触頻度が高いと発症リスクが上がると言われています。詳しくは消費者庁・厚生労働省・経済産業省ニュースリリースを参考にしてください。ここでお話したい性交痛とのつながりは、コンドーム。市販されているコンドームのほとんどがラテックス素材です。もし、アレルギーがある場合はラテックス素材のコンドームが触れたところが赤みやかゆみがでたり、性交時に痛みを伴うことがあります。対策としては、ラテックス素材以外のポリウレタンやイソプレンラバー(アイアール)素材のコンドームへ切り替えることで回避できます。しかし、ゴム製品の接触でかぶれるなど異常が現れた時は、普段の生活でも対策が必要かと思います。速やかにアレルギー検査を医療機関で受けて下さい。
セックスの痛みを「年齢的な問題かな」とか「このまま卒業しちゃおう」とそのままにするより、からだの声として受け止め、健康管理のために医療機関にかかることの大切さを知って頂けたらと思います。
※参考資料 消費者庁・厚生労働省・経済産業省ニュースリリース
ライター/小林ひろみ
メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。日本性科学会会員。性と健康を考える女性専門家の会 理事。デリケーゾーンブランドYourSide、潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛について情報発信を行う。幅広い性交時の痛みに関する情報サイト「Fuan Free (ふあんふりー)」を運営。