除菌洗剤や漂白剤を使ったり、天日に干したり、乾燥機で高温乾燥させたり。あれこれ手を尽くしても、タオルのニオイや黒ずみってなかなか解消されないですよね。結局は買い替えるしかない……と、諦めていませんか? そんな方に朗報! タオルに残る嫌なニオイと黒ずみの発生源が、花王株式会社の独自研究により新たに発見されました。初めてわかった「タオル洗濯の新常識」と、『アタックZERO』改良の裏側を、花王株式会社の担当者に教えてもらいます。
教えてくれた人
化粧品、スキンケア・ヘアケア、ヒューマンヘルスケア、ファブリック&ホームケアと、消費者向けに4つの事業分野で“きれい”を満たすものづくりを展開。創業以来、消費者の立場にたった“よきモノづくり”を通じて、人々の豊かな生活文化の実現に貢献することをめざす。
ニオイや黒ずみの発生源は、菌の隠れ家「バイオフィルム」
――なかなかすっきりしないタオルの嫌なニオイや黒ずみの発生源が、わかったそうですね。
はい。タオルには「バイオフィルム」というものが存在していることが新たにわかりました。バイオフィルムを衣類上で発見したのは、今回が初めてです。
――初の発見なのですね! バイオフィルムとは、ズバリ何なのでしょうか?
バイオフィルムは、菌がつくり出した多糖やタンパク質による複合体です。汚れやニオイ菌を覆って、洗浄剤が浸透するのを阻害。従来の漂白剤や除菌洗剤、天日干しや乾燥機での高温乾燥では、対処できないことがわかりました。
「菌の隠れ家」であるバイオフィルムは、除菌洗剤・漂白剤(※)、天日干しでも対処できないことが判明。※花王株式会社除菌洗剤・酸素系漂白剤
また、水飴のようにネバネバしているので、外側に新たな汚れやニオイ菌をくっつけてしまいます。こうした困った特徴から、私たちはバイオフィルムを「菌の隠れ家」と呼んでいます。
じつは、バイオフィルムは日常生活でも身近に存在しています。たとえば、キッチンの排水口のヌメヌメとした汚れや、浴室の床のピンク色の汚れなども、バイオフィルムなのです。
――えっ! 排水口のヌメヌメと同じものが、タオルにもついているのですか?
衣類とキッチンの排水口では、存在している菌の種類が異なるので、まったく同じものではありません。ただ、大きなくくりで考えれば、同じようなものが存在していると考えられます。
バイオフィルムをつくらせないために。知っておきたい洗濯のコツ
――今回の研究では、タオルのくすみにも着目されていますね。新品のタオルと、従来通りの洗濯を6ヶ月間続けたタオルの色の違いには衝撃を受けました。
24家庭に新品のタオルを配ってふだん通りの使用と洗濯を繰り返した結果がこちら。6ヵ月後には、明らかなほどくすんだ状態に。
何回洗っても落ちにくい黒ずみ・くすみについて、把握できていない課題があるはずだと研究が始まったのが、2018年。まずは研究員が自宅の衣服やタオルなど、ありとあらゆる衣類について顕微鏡で観察して、菌がどういう状態で存在しているのかを探りました。その後、一般家庭から衣類を集めて、さらに顕微鏡で観察し解析を続けました。その結果、衣類上でバイオフィルムができていることを突き止めました。タオルの平織り部分、パイルの根本部分に、とくによく存在していることもわかっています。
――バイオフィルムをつくらないために、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?
バイオフィルムは菌がつくり出したものです。菌は、「水分・栄養・温度」という条件がそろうと増えやすいので、そうならないために次の3点を気をつけましょう。
1. 洗濯機に洗濯ものを詰め込みすぎない
洗濯ものを詰め込みすぎると、汚れが落ちにくくなり、残った汚れ=菌の栄養につながることがあります。詰め込みすぎは避けましょう。
2. 洗剤・柔軟剤は、指示通りの量を使う
洗剤や柔軟剤は、多く使えば使うほどいいというわけではありません。使用量の目安を守って適量を使いましょう。洗剤が少なすぎると汚れ落ちが悪くなり、多すぎるとすすぎが不十分になります。洗剤・柔軟剤は、パッケージに表示された通りの量を使いましょう。
3. 早く乾かす
人の目には乾いているように見えても、菌にとっては十分な水分がある場合もあります。洗濯ものは、風通しのいい環境に干すなどして、できるだけ早く乾かしましょう。湿度の高い時期は、扇風機やサーキュレーターなどの活用がおすすめです。
バイオフィルムに対処する新技術とは?
――バイオフィルムができている衣類と、そうでないものは、家庭で見極められますか?