今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
理性を耕していく
今週のかに座は、狂った社会のなかで健全な理性を取り戻していこうとするような星回り。
『おかしいから笑ふよ風の歩兵たち』(鈴木六林男)という句のごとし。作者は、中国、フィリピンを一兵士として転戦した戦争体験者であり、掲句もまたその際の体験を句にしたものでしょう。
戦場でもおかしいことはあり、ふと笑いを誘われることがある。こうして理性を保ちつつ、日常的になっていきつつある死と向きあわざるを得なくなっていくことこそが戦争の本質であり、それは人間が経験しうるあらゆる体験のうちで、最も残酷なものの一つであると思います。
あなたもまた、みずからの日常を目に見えない戦場と見なし、ふとしたことで笑える有難みを噛みしめていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
推しを発見した君へ
今週のしし座は、「いかに頑張るか」ではなく「どこへ逃げるか」に方向転換していくような星回り。
中世の河原には多くの人がそこに住み、役者や皮革業、清掃、細工職人、庭づくりなどが暮らし、彼らは「河原者」と呼ばれ、制度のすき間に生きていました。
江戸文化研究者の田中優子によれば、「体と魂の力を抜いて、エロティックなことや、水のことや火のことや、生のことや死のことや、向こう側のことを考える場所が必要となる。河と河原がマザーなら、それは壊してならない『場所』だった。しかしもう、そんな場所は日本のどこにもない。」とのこと。
あなたもまた、そんな失われた逃げ場所を、制度のすき間や過去と現在の差異のなかに改めて見出していくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
苦しむことが楽しくなるまで
今週のおとめ座は、さりげなく流れていた人生のBGMに気が付いていくような星回り。
『いづこまで臼こかし行く枯野かな』(渡辺水巴)という句のごとし。ひとりの男が「臼(うす)」をころがしながら、他にこれというものもない枯野のなかの道を行っているのだという。
作者はふと果てしない単調な行為の繰り返しに、何とも言えないやるせない淋しさを覚えた。それがこの句の生命となって、現実とは異なる読者と共有された心象風景のなかを、どこまでもどこまでも臼をこかし行く。
あなたもまた、みずからの人生の原点にして行き着く果てにある情緒のようなものと、感応していきやすいはず。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
他界にまなざしをひらく
今週のてんびん座は、あの世の呼吸と背中合わせになっていくような星回り。
亡くなった先祖や守護霊のことを、日本語ではよく「草葉の陰から見守っている」などと表現しますが、たとえば、柳田國男の『先祖の話』によれば、そうした日本特有の「あの世」観には4つの特徴があるのだそうです。
もし他界にひらくまなざしがあるとすれば、それはこの世を見ている(ただし別角度から)ということ。だとするなら、私たち生者のまなざしの中に死者のまなざしが重なる瞬間というのは、そう珍しいことではなく、日常的に起きていることになります。
あなたもまた、そんな風に死者の存在や彼らなりのまなざしに改めて触れていくことが、テーマとなっていきそうです。