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脳疲労を回復させる“歩く瞑想”の5つのポイント

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疲れが抜けず、力が湧いてこない。もしかするとその症状は、精神的な疲労、“脳疲労”かも。禅の叡智を取り入れた“歩く瞑想“が、いまを生きることの大切さを教えてくれます。

脳の疲れを取り払いパフォーマンスを向上させる

精神科医で住職の川野泰周先生は、一度に使うことのできる注意力の総量、注意資源のほとんどを、外から入ってくる情報に使い続けていることが脳を疲れさせていると指摘します。

「大多数の人々がパソコンやスマホを使って作業し、傍にいくつもの画面を置きながら生活しています。さまざまな媒体から同時に情報が入ってくるため、どこに注意を向けたらよいのか分からなくなるのです」(川野先生、以下同)

その結果として、複数のタスクを処理しようとしても一つひとつの判断力が低下し、スピードもクオリティも落ちてしまうそう。このように、ほかのことを考えながら自動操縦のような形でまた別の作業を行うことをマインドワンダリングと言って、現代人は、起きている時間の約46%をこの状態で過ごしていることが、ハーバード大学の研究結果でも発表されています。

脳疲労が何を引き起こすのか完全には解明されていませんが、自律神経を調整する機能の破綻がもっとも起こりやすい現象と言われています。交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、一日の中で繰り広げられる自律神経の程よい揺らぎが止まってしまい、仕事中でも、休んでいても能率が上がりにくかったり、休息モードに入りにくいため睡眠の質も下がってしまうことも。

そこで川野先生は、古来より禅宗の坐禅修行の一貫として取り入れられている〝歩く瞑想〞を実践することを勧めています。

「瞑想というのは、いま、目の前で体験していることにすべての注意を注ぐこと。瞑想をしている間はマインドワンダリングが抑制され、脳疲労が回復することが非常に期待されているのです」

方法はいたってシンプル。「右足がついた、左足がついた」という感覚を感じるだけでOK。このくらいの時間やらなければならないという決まりもなく、たとえ2分行うだけでも、その頻度を上げてルーティンにすると◎。続けていくと、結果的に脳の中のさまざまな部位が活性化し、判断力や注意力、創造力がアップ。さらにストレスにも強くなるのだそう。人は、悲しくなったり嫌な気持ちになるとき、前頭葉の内側にある前頭前野が理性の力を働かせ、ネガティブな感情を生み出す扁桃体を無理やり理性で封じ込めようとしますが、扁桃体の活動をあるがままに観察するうちに、心が穏やかになっていく過程を俯瞰できるようになります。

歩く瞑想は、自分の心のあり方を受容する練習になるので、最終的には自己肯定感が増していくことに。それは自信であったり、主体性を持って生きていくエネルギーとなり、前向きに生きる原動力になります。

POINT

リズムと呼吸を同期させる

歩行のリズムと呼吸を合わせることだけに意識を向ける歩く瞑想もおすすめ。たとえば4歩歩いたら息を吸い、また4歩歩いたら息を吐くというふうにリズムを決めます。ただしその歩数は自分のやりやすい数でOK。

左足と右足の接地のリズムを感じるだけでOK

「右、左」と、心の中で掛け声を掛けながらになってしまうと、言葉が先になり、歩くという行為がついていく状態に。これは歩く瞑想にはなりません。まずは自然な歩行が先にあり、それを足の感覚で追いかけるように観察して歩きましょう。

目的意識を持たず、ただ歩く

難しく考える必要はなく、ただ歩けばOK。“成長に直結することがしたい”など、“そうしなくてはならない”という思いは手放しましょう。

心が落ち着いている状態で歩く習慣をつける

心の中にネガティブなものがあるときにだけストレス発散法として取り入れると、歩く瞑想=ストレスがかかっている状態だという紐づけが脳の中で生まれてしまいます。穏やかな気持ちでいられるとき、あえて時間をつくり行ってみましょう。

リトリートできる場所を見つけておく

リトリートとは、避難・退却・修養という意味がある言葉。ふだんと違う場所を歩くことによって効果が顕著に現れるので、近所に人が少なく気が散ることが少ないスポットを探してみましょう。

歩いているとき 、脳の中で起きていること

DMN

【マインドワンダリングの状態】
解決方法が定まっていない問題があり、思いを巡らすときに活性化

CEN

【集中力が保たれた状態】
明確な目標を持って思考を集中するときに活性化

SN

【最適な情報を抽力】
DMNとCENを切り替える

脳内にある3つの神経ネットワークのうち、マインドワンダリングの状態のときに活性化しているのが「DMN」で、脳の消費エネルギーの半分以上を消化。瞑想によって「SN」が「CEN」と「DMN」を切り替え、脳の燃費をよくしてくれます。また、歩く瞑想の継続により特に期待できるものとして、スポーツ選手が最大限のパフォーマンスを発揮するときなどに活性化する、「dlPFC(背外側前頭前野)」が効率的に働くことが考えられています。この部位は、頭の中でリアルタイムな情報を一時的に記憶し、同時処理する能力を司り、プレゼン能力や空気を読む力など、日常のコミュニケーションに欠かせない、ワーキングメモリという能力を担っていることも分かっています。

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