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ラーメンの脇役を国産にすると解決する2つの問題。「クラフトメンマ」が全国に広がる

「メンマはマチク」という常識を覆し、放置竹林にある「孟宗竹(モウソウチク)」や「破竹(ハチク)」や「真竹(マダケ)」でメンマをつくることができないか。しかも、タケノコではなく伸びてきた幼竹を使えないかというのが、日高さんの発想でした。

「タケノコは探したり掘ったりするのが大変ですが、地上に伸びた幼竹なら蹴ったり叩き割ったりしていたくらいですから、簡単に収穫できるんです」

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節の硬い部分は取り除いていく
写真提供:日高榮治さん

日高さんは、それまで食べるという発想がなかった孟宗竹や破竹の試食を重ねました。2メートルくらいまで成長した幼竹でも、ゆでて塩漬けすれば硬い節の部分以外は食べられることがわかりました。

「化学メーカーで働いていたときには製品は値崩れしていくものでしたが、食品ならその逆の挑戦ができます。加工して付加価値をつけることで、原価の何倍もになる。そうすると地域にも利益を還元できるのではないかと考えました」

現在、幼竹は1kgあたり60円で取引されています。皮をむくと倍の120円になり、塩漬けして保存できる状態にすると1000円に。塩を抜いて味を付けてメンマに加工すると、1kgあたり4000〜8000円の値段をつけることができます。竹林整備が目的だった農家に加工のノウハウがなくても、地域内の食品加工業者と協業すれば、それぞれのプロセスで利益を生み出すことができるというわけです。

「塩漬けの技術は個人でもっている人も多いので、伐採、塩漬け、加工それぞれが得意な人たち3人くらいで組んでも、各工程で利益を得ることができます」

幼竹1本あたり、食べられる部分はおよそ10kg。これまで「今日は100本をへし折った」と苦労話をしていた人たちが、数百万円の利益を生み出せるという仕組みです。

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地域の人たちで協力して下処理を進めていく
写真提供:日高榮治さん

糸島ではすでに幼竹の伐採から加工、流通までを一貫した仕組みが確立し、2024年は100トンの生産を目標にしています。

全国に「クラフトメンマ」の輪

「純国産メンマプロジェクト」の動きは全国に広がり、地域の特色を生かした味付けの「クラフトメンマ」が登場しています。

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横浜市で2023年9月にあった「Craft Menma Market Night」には全国のクラフトメンマが並んだ
写真提供:横浜竹林研究所〔ハマチクラボ〕開催「Craft Menma Market Night」

2023年10月27日現在で、35都府県の121の個人と団体がプロジェクトに参加。2023年11月4日には糸島市で「第5回 全国メンマサミット in糸島2023」が開催され、約400人が参加。各地のメンマを品評しました。

「竹林整備は全国共通の課題ですから、加工のノウハウをオープンにして共有しています。そもそもこのプロジェクトは、新しい技術でもなんでもないんです。タケノコではなく幼竹を食べてみたらどうだろう、と思いついただけですから」

ただ現状、日本のメンマ消費量のほとんどはラーメン店での需要です。物価高の今、ラーメン店に割高な国産メンマが受け入れられるかどうかは、まさにこれからの課題です。

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全国各地の個性豊かなクラフトメンマ
写真提供:横浜竹林研究所〔ハマチクラボ〕開催「Craft Menma Market Night」

一方、塩漬けの需要は増えており、供給が追いつかないという問題も生まれています。

「収穫に表年と裏年があるため安定して供給できる仕組みの確立や、私有地である放置竹林の権利関係など、課題はまだまだあります」

安価な輸入品が出回って、国内生産量が消費量の約1割にまで落ち込んだタケノコ。国産の塩漬け幼竹が一般に普及すれば、再び自給率が上がることも期待できます。

「竹の旺盛な繁殖力が竹藪の原因でしたが、今後は旺盛な繁殖力が喜ばれることになるでしょう。山に価値が生まれると、整備が計画的、継続的に進むようになります。竹林整備は持続してやらないと意味がありませんから」

ビジネスチャンスが未知数の国産メンマ。それでも日高さんは「経済性を見込んだとしても、純国産メンマプロジェクトの理念はあくまで竹林整備でなければなりません」と強調します。山の価値を取り戻し、整備された美しい竹林の風景を再び見られるように。

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