収入が少ない、転職も難しい、正社員にはなれない……。これは誰かが決めた運命なのでしょうか。節約生活もアイデアや工夫で楽しめるうちはいいけれど、少しの贅沢さえも我慢し続ける生活は、いつまで続くのでしょうか。積極的に選択した生活ではないかもしれませんが、運命は自分で変えることができるのではないでしょうか。そのための方法の一つがお金の使い方、貯め方にあるのです。
執筆者:伊藤 加奈子
お金の使い方は自分の選択で変えられる
占いって好きですか? 占いで自分の人生を左右されたくはありません。でも自分に都合のいい占いは信じたくなるし、今日のラッキーカラーはオレンジ!って言われたら、何かオレンジのものを身に着けようとします。
運命を変えるには、お金の使い方、貯め方を自分で選択していく
占いって、ちょっとした安心を得られるからでしょうか、なぜか占いどおりにやってしまう自分もいます。みんなそんなものですよね。いつも何かを決めなくてはいけない生活をしていると、誰かに決めてもらいたくなるという気持ちになるのかもしれません。
今日この瞬間に起きることも予想できないのに、「あなたの老後は、こんな人生になりますよ」と言われたときに、あまり幸せな内容じゃなかったら聞き流したり、逆に何の根拠もないけれど「幸せな老後ですよ」と言われたら、うれしくなったりします。でも占いはあなたの人生を保障してくれません。もしも占いで、いい結果が出たら、そうなるように自分が動くしかないのです。
占いだけを信じて生活をする人はいません。心に不安を抱えていたり、生活を変えたいと思っていたり、仕事に悩み、恋愛に迷いがあったり。人は何か選択をしないといけないときに、誰かを頼りたくなるものです。なんとなく自分で結論が出ているにも関わらず、それが正しい選択であると言って欲しいために、誰かに聞いてみたくなるのです。
日々生活していると、ほんの些細なことでも自分で決めなければいけないことの連続です。それが正しかったのか、間違っていたのかは、誰にもわかりません。自分ですら、わかるのはずいぶん後になってからということも少なくありません。それだけに、重要な決断に迫られたとき、自分だけではなく人の意見を聞いたり、情報をチェックするわけです。
ところが、人生に関わる大きな選択であるお金の使い方や貯め方については、意外と無意識のうちに決断することを避けていることに気がついているでしょうか? 難しいから、もっと勉強してから、特に困っていないからと、お金に関することは後回しにしていませんか? 収入があって、ひとまず生活に問題がなければ、お金の使い道や貯め方を変えようと思わないのかもしれません。しかし、お金の使い道や貯め方こそ、自分で決断しなければならないことのはずです。決断しない、選択しないことで、現在の運命を自分の手で変えるチャンスを逃しているとも言えるのです。
何も選択しない=お金は貯まらない、増えない
お金のことで選択する、決断することって、そんなにある? と思われるかもしれません。以下に選択すべき5つのことを紹介します。該当する項目があった人は、何をどう選択すべきなのか考えて、実行に移してみてください。
1.会社指定の金融機関だけ使い続けている
給料が振り込まれる銀行口座は、会社から指定された金融機関から選んでいます。複数、それもネット銀行も使える企業が増えてきましたが、多くの場合は、その企業のメインバンクや取引関係のある金融機関です。給与振込の口座があれば、当面お金に関することで不便を感じることはありません。そこから公共料金の引き落としやクレジットカードの決済にも使えるので、お金は滞ることなく回っていきます。
しかし、それでは自分でお金の使い方、貯め方を選択しているとは言えません。勤務先に都合のいいように自分のお金まで管理されていると言ってもいいでしょう。本当の選択は、給与振込口座を経由して、お金を自分に都合のいいように回していくために、どうしたらいいのかを考えるということです。
会社が指定した金融機関のサービスが他と比較して優れている、定期預金金利も他よりも高いと判断すればそのままでいいでしょう。でもたいていの場合は、ほかにもっと有利な金融機関があるにも関わらず、選び取る作業をさぼっているのです。お金に関わる選択で最初に迫られるのは、どの金融機関を使うか、なのです。
2.普通預金しか使っていない、口座が1つしかない
あえて普通預金を選んでお金を貯めている、という人はいません。それは単純に給与から残ったお金をそのままにしているだけです。普通預金しか貯蓄商品を保有していない、金利の高い定期預金は利用していない、これではお金は貯まりません。お金を本当に貯めたいと思うなら、普通預金からお金を動かす決断をしましょう。
いつも使っている金融機関の定期預金の金利が良ければ、そのまま普通預金からスライドして定期預金にすればいいのですが、都市銀行よりも金利のいい定期預金を扱っている銀行があることを、まずは理解しましょう。口座を新たにつくる手間がかかりますが、選択するというのは、手間がかかるものです。
3.自動引き落としのお金をほったらかし
給与振込口座から公共料金の引き落としをしている人は多いでしょう。公共料金に限らず、クレジットカードの決済や保険料の支払いなど、生活のありとあらゆる場面で使うお金を口座引き落としで利用している場合、自分で選択することなく、お金が素通りしていきます。
一度手続きをしてしまえば、自動引き落としは便利ですが、毎月記帳せず、引き落とされたお金に無頓着の人も少なくありません。何の裏付けもないままに光熱費を節約する前に、契約内容で基本料金を下げることができないか調べてください。通信費も契約内容をほったらかしにしていると、せっかくの割引も受けられず、ソンしていることに気づきません。
契約内容をチェックしたり、割安な料金体系に変更するのは、調べるための時間がかかります。自動的に引き落とされているものに疑問を持って、変えることにチャレンジしない限り、ずっと同じです。誰かが、こちらが有利だからと都合よく変えてくれるわけではありません。
また、消費税の増税に伴い、キャッシュレス決済での還元が話題になっています。さまざまなキャッシュレス決済がありますが、決済ツールの残高がなくなればオートチャージされ、チャージ金額は口座から引き落とされる仕組みで、非常に便利なものです。しかし、最終的に口座からお金が引き落とされるのに違いはなく、いくら使ったのかわからなくなってしまいます。キャッシュレス決済を多用する場合は、しっかりとした口座管理が不可欠です。
4.割引、優遇、軽減……。お金が戻ってくることを知る
社会保険制度や税制に関しては、毎年動きがあります。健康保険料や消費税が上がり、負担が重くなっているのは事実ですが、一方で、税の優遇措置がある制度も改定、新設されているのです。
たとえば、2017年1月からは個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象が拡がり、原則20歳以上であれば、だれもが加入できるようになりました。運用中の利益が非課税、受け取り時にも税の優遇があり、掛金は全額、所得控除の対象と、税の優遇を受けながら老後資金を積み立てていけるものです。
かなり普及してきましたが、ふるさと納税もそうです。自治体からの返礼品が話題になっていますが、本来は、ふるさと納税は寄附金控除の対象で、確定申告をすれば所得税、住民税が軽減されるというもの。
このように、税制は身近なことであり、知らないとソンすることでもあるのです。
もっと身近なところでは、勤務先に財形貯蓄制度があれば利用するべきです。財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄を合わせて元本550万円までの利子が非課税になるからです。勤務先に制度があるのに、利用しないのは筆者には意味がわかりません。選択、決断の勇気すら必要のないものです。必要なのは勤務先に制度利用の届け出をするだけです。
ほかにも、国民年金を1年分まとめ払いすれば、平成31年度では4130円割引されます。2年分なら1万5760円の割引です(口座振替での前納の申込期限は、毎年2月末日。年後半の6カ月分は8月末日。土日の場合は金曜日まで)。こうしたことも情報を選びとり、予算繰りを考えたうえで、割引を受けるのかどうか判断することが大事です。基本的に国や自治体に関わる制度は自分で申請しないと、優遇措置は受けられません。やはりオトクな制度を使いこなすには、自分が動くしかないのです。