今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
真空に空気が流れ込むように
今週のかに座は、表面的な好き嫌いの向こう側に、まだ名前のついていない感情を見出していこうとするような星回り。
川端康成の戦後期の代表作である『千羽鶴』には、「むかむかする嫌悪のなかに、稲村令嬢の姿が一すじの光のようにきらめいた」という表現が出てきます。
これは「むかむか」という吐き気を感じる感覚を通して嫌悪という強い不快感を増幅させていくなかで、その窮地を救ってくれる女性の存在を「光」のイメージで拾い上げていく非常にダイナミックな芸当であり、その後に当人は「新鮮な気持がした」と語っています。
あなたにとっては、特に「怒」と「哀」のあいだにあって「喜」の周囲へと通じる「嫌悪」の感覚が、ひとつの鍵になっていくことでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
手足を動かす
今週のしし座は、全身の動きを連動させていくための紐帯を求めていこうとするような星回り。
『寒の水ごくごく飲んで畑に去る』(飯田龍太)という句のごとし。おそらく、作者は独自の文学を追求する言葉の人であると同時に、徹底して地に足をつけて生きている行動の人でもあって、それがある種の筋の良さとなって句にも現れているように思われます。
寒中の畑仕事がどれくらい重労働なのかは、都会の現代人にははかり知れないところがありますが、少なくとも目と指先だけでなく、全身を酷使していたはず。
あなたもまた、渇いたら癒す、癒えたら体や手元を動かすくらいのシンプルな行動原理とその徹底を心がけていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
僕はお断りするね
今週のおとめ座は、体の知れない領域で起こる<私>をめぐる地殻変動にすすんで関与していこうとするような星回り。
宮本輝の自伝的な小説『二十歳の火影』には、小説を読んだ際の感動について、「しびれ薬をしこんだ針のように、私の魂の奥深くの、得体の知れない領域に忍び入ってきた」と述べた箇所がある。
一言でいえば、感動は毒なのだ。そして、それをあおる覚悟がある者だけに贈られる栄誉のことを、私たちは分かったような顔をして「創造性」と呼んでいる。
あなたには、それだけの危険を冒すだけの準備が出来ているだろうか。以前の自分ではいられなくなってしまう準備が。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
さよならだけが人生さ
今週のてんびん座は、忘れていた“儀式”を再び遂行していこうとするような星回り。
『雪つぶてまた投げ合うて別れかな』(阿部慧月)という句のごとし。
「してやられた」と悟った方も、思わず「なにくそ」と投げ返す。そしてそれを合図に、しばらく雪合戦が続くわけですが、しばらくして互いの息が切れてくると、どちらともなく「じゃあ、またな」と声をかけあって、“儀式”は終わるのだ。
あなたもまた、自分の人生のベースとなっているストーリーを改めてなぞっていくことになるはず。