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田んぼのないふるさとは悲しいから、米粉の麺づくり→米づくり→森林整備をはじめた夫婦

ライフスタイル

パスタ、うどん、ラーメン、そば......あらゆる麺の代わりに幅広い調理ができる玄米麺。小麦アレルギーの人も安心して食べられるようにと原料の米粉にこだわっている「宮内舎」は、島根県にUターンした夫婦が創業しました。「里山の風景を残したい」という2人の強い思いは、ついに本格的な稲作にまで発展していきます。

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モチモチしてコシがある玄米麺
画像提供:宮内舎

島根県出雲地方の山間地にある「宮内舎」は、小倉健太郎さんと小倉綾子さん夫妻が営んでいます。

宮内舎

販売しているのは主に、米粉の麺と米粉パンケーキミックス、それにお米やお餅。飲食店向けにも麺や米粉を卸しています。

原料のお米は、地元の雲南市の契約農家とともに育てた特別栽培のもの。顔が見える関係の人たちから仕入れ、素材の味を引き出す加工にこだわっています。米粉の麺は、パッケージを開けた途端、お米そのものの香りが立ちのぼります。

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玄米の香ばしくて甘い香りがする
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

「今でこそ健康志向やインバウンド需要で米粉を選ぶ人が増えましたが、私たちがつくり始めたころは、安心して食べられる国産の米粉製品はあまり流通していませんでした」

そう話す綾子さんは10年ほど前、体調が優れない時期があり、食事から小麦を除去すると改善したといいます。米粉の麺をつくったのは、自身が安心して食べられるものをつくるためでもありましたが、それだけではありませんでした。

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小倉綾子(おぐら・あやこ) 合同会社宮内舎 フードクリエイター / 小倉健太郎(おぐら・けんたろう) 合同会社宮内舎 CEO
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

耕作放棄地をなんとかする

綾子さんの実家は酪農家で、宮内舎の事務所はもともとは牛舎だった場所にあります。

綾子さんは大学進学で実家を離れ、その後、東京のフェアトレードの店などで働きました。2013年に地元に戻ってきたときに目にしたのは、幼い頃から慣れ親しんできたものからは変わり果てた景色でした。

「両親は牧場を運営するのに手一杯で、田んぼは荒れ放題。小学生のときの通学路にあった川は倒木とゴミで覆われ、森は草木が生い茂って真っ暗になっていました」

「もともと私は、買った花よりも道端に生えている雑草などの小さい花のほうが好きなんです。土や藁のにおい、季節ごとに変わる風の冷たさなど、田んぼがある風景が心のふるさとだったんだと思い出しました。なので、地元産の米粉を使うことで耕作放棄地をなんとかしたいという思いもあったんです」

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

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写真提供:宮内舎

健太郎さんとは2013年に、島根県の定住政策による地域おこし事業を通して出会いました。2人とも「食と農のあり方を変えたい」という共通の思いがありました。

健太郎さんは松江市出身。大学在学中に環境問題に関心を持ち、自然と共生する暮らしを学ぶためニュージーランドへ。帰国後に食品メーカーで働いたのち島根に戻り、雲南市に移住してきました。

2人は地域おこし事業の一環で、米粉の麺づくりを始めました。2年間の任期中に、東京のラーメン店「ソラノイロ」の小麦アレルギー対応ラーメンで玄米麺が採用されることになり、ビジネスとして続けていくめどが立ったことで2016年4月、「合同会社 宮内舎」を設立しました。

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画像提供:宮内舎

「宮内地区」と「牛舎」からとった「宮内舎」。地域の農家との関係性を大切に、化学肥料を使わず、農薬もできるだけ使わない特別栽培米を、品質や状態に合った適切な価格で仕入れました。

「少しだけつくって近くの方にお譲りするような小さなところからコツコツと積み重ねてきました」(綾子さん)

原料からつくるしかない

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