睡眠は健康にとって欠かせませんが、適切な睡眠が確保できている人は多くありません。睡眠不足や質の悪い睡眠は、脳のパフォーマンス低下につながるほか、長期的には肥満や生活習慣病のリスクになります。とはいえ睡眠時間の確保が難しいこともありますよね。ならば睡眠の「質」に注目してみましょう。この記事では、睡眠が脳に与える影響と、質の良い睡眠に導く簡単なエクササイズをご紹介します。
ノンレム睡眠時、特に入眠直後の眠りの質は「記憶力のパフォーマンス」に影響する!
厚生労働省の調査によると、30~49歳の女性の4割以上が1日6時間未満の睡眠しか取れていません。睡眠は時間だけでなく「質」も重要です。
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分かれ、レム睡眠中は夢を見ながら短期記憶を整理します。対してノンレム睡眠では脳は休息状態になっています。ノンレム睡眠は眠りの深さによって3段階に分けられ、そのうちの深い眠りの2段階を「徐波睡眠」と呼んでいます。徐波とは、脳波のうち周波数が低く振幅が大きいθ波とδ波のことです。レム睡眠中はθ波、ノンレム睡眠中はさらにゆったりとした波形のδ波が現れます。δ波がどの程度出ているかはデルタパワーと呼ばれ、睡眠の質の評価基準に用いられています。
記憶はレム睡眠中に作られると思われがちですが、実際には記憶の「定着」は徐波睡眠中に行われることがわかってきています。新しく学んだことや気づいたことは、そのままだと数時間で忘れてしまいますが、徐波睡眠中に重要な情報が選び取られ、長期記憶へと変換されます。この深い眠りは、体だけでなく脳の働き、特に記憶力にも大きく関わっているのです。
また、脳の老廃物代謝は睡眠中に行われ、特に入眠直後のノンレム睡眠時に活発になります。成長ホルモンの分泌量も高まります。成長ホルモンは筋肉の維持・増強から髪や肌の再生などを行う大切なホルモンですが、残念ながら大人になるとグッと分泌量が低下してしまいます。この入眠直後の眠りの質を高めるには、スムーズに眠ることが大切です。
図:津野千枝
足首回しでスムーズな入眠を
おやすみ前に試してほしいのが足首を回す運動です。
足首は、動きのクセをダイレクトに受けるパーツ。ぐるぐる回すことで血液やリンパ等のめぐりが良くなり、老廃物の排出が促されます。翌日に疲れが残りにくくなるだけでなく、入眠に適した体温に整いやすくなります。
仰向けの足首エクササイズ
①仰向けになり、足首を内から外に10回ぐるぐると大きくまわす
②同じ要領で今度は外から内にを足首を10回まわす。
撮影:津野千枝
【余裕があれば】前屈の足首エクササイズ
腰も一緒にストレッチしたい場合は、前屈で行うのもおすすめです。
①長座になりつま先をつかむ。膝は曲げても伸ばしてもOK。
②そのまま足首を時計回りに10回まわす。つま先に引っ張られて上半身が動くと腰回りにストレッチを感じるはずです。
③反対側も同様に10回まわす。
撮影:津野千枝
どちらか片方だけでも、1セットからでもOKですが、余裕があれば左右で1セットとして2〜3セット行ってみてください。グッと効果を感じやすくなるはずです。
動画で確認してみる
最後に
睡眠のメカニズムを知ると、質の良い眠りを得るための最適な行動を自然と選びやすくなります。 入眠前のリラックス習慣の重要性がより感じられるはず。ストレスや疲れのリセットし、心地よい明日が過ごせるはずです。ぜひ実践してみてくださいね。
資料
[1]厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド 2023』https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf