お役立ち情報や流行のファッション、おいしいお店の情報にライフハック……あらゆる記事が多くのメディアやSNSから毎日星の数ほど発信され、書店には多くの本が並んでいますが、この文章を書いているのはいったいどんな人?今回は、フリーライターのちょっぴりシビアだけど実は子育て中にはぴったり! な働き方をご紹介します。
お話を伺ったのは…フリーライター水谷映美さん
会社員の夫と中2長男、小5長女、小3次女の5人家族。
ティーン向けファッション誌の広告営業、企業の受付担当、社長秘書などのキャリアと、リフレクソロジーの資格やバンドでドラマーの経験を持つ、アグレッシブなBTS推しの45歳。現在は韓国語を勉強中。特技は書道。
飾らないパーソナリティと豊かな表現力が魅力のフリーライター。
2024年、名古屋の老舗和菓子店の波乱万丈、紆余曲折のノンフィクション本「鯱もなかの逆襲」古田憲司 (ワン・パブリッシング)を手掛けた。
フリーランスのいいところ、大切なこと
水谷さんの自宅デスク
コロナ禍以降は在宅勤務が増えているとは言うものの、1日のうちで必ず在席しなければならない時間帯(コアタイム)の設定がある会社が多く、拘束時間はそれなりに発生する。もちろん出版社などメディアに所属するライターにも、その縛りは発生する。
子どものダンスレッスン中にスタジオの片隅で原稿を書くことも。
対してフリーランスはというと「納期を守る」ことさえできれば、24時間を自由に使うことができる。「参観日やPTAなどを優先してスケジュールを立てています。子どもの習い事を見守りながら原稿を書いたり、まぁちょっと夜中とか明け方に頑張らないといけないこともあるけど(笑)。」
現在は子育てを優先中だが、締め切り前の山場を乗り越えつつ、水谷さんの毎日は推し活や、そこから派生した語学のレッスンなどで充実している。彼女の闊達なおしゃべりと同様に、その時間の使い方も実に小気味がいい。
時には、多忙なフリーランス仲間と時間を合わせてモーニングに繰り出すこともある。「そんな時に困りごとを相談したり、お互いに共有できる『あるある』な話題でストレス解消をしてますね。」
毎月一定の収入が保証された特定のメディアの専属では無く、フリーライターとして活動する中で大切なことは? と聞くと「当然だけど、取材のときは相手のことをとことん調べ上げてからお会いします。次のオファーに繋がるよう、お話を丁寧に伺うための手間は惜しみません。とはいえ、万全を期していても先方のイメージするものと私が書いたものが一致しないときもありますが、そんな時のために予め別の切り口のプランBを準備しておくことも大切ですね。」と、さらりと答えてくれた。
誠実さと正直さ、決して労力を惜しまない丁寧さとクライアントへの気配りを忘れないことが、長年仕事が途切れない秘訣。もちろん、誰もができる……ということではない。これが彼女が「売れる」理由だ。
増える「中の人」業務
SNSが世界を席巻するようになり、テレビや雑誌を上回る情報量を人々がここから得るようになった。インフルエンサーや一般ユーザーが流す情報の方が親しみやすく、スピード感があるため、SNSの情報を頼りに旅の計画を立てたり、お店探しをする人口が爆発的に増えた。
「お店や企業の情報発信も、以前のようなホームページではなくXやInstagramなどが主体です。SNSは日々更新し続ける必要があるため、プロのライターに外注している企業も増えています。」と水谷さんは言う。企業情報や商品、店舗の紹介などの「SNSの中の人」業務のオファーが増えている、と言うのだ。
「好き」が絶大なパワーになる仕事
水谷さんもそんないわゆる「中の人」業務を担うプロライターのひとり。
「インフルエンサーは予めフォロワー数やインプレッションに応じて企業とのタイアップが決まるので、本人のキャラ設定が必要ですが『中の人』は、企業のSNSを運営するので私自身の個性は必要ありません。そのかわり、企業イメージに直結するため、社員さんに負けないくらいの思い入れは大切。副業からならトライする価値はあると思います。一番いいのは自分の好きな商品のメーカーやお店に『私、やりましょうか?』とアピールすることですね。行きつけのカフェでも好きなお洋服のブランドでも、とにかく『大好き』な気持ちがあれば、技術やキャリアを超えるパワーになるのがこの仕事です。」
そんな時代に敢えて「本」に挑戦!
そんなWEB全盛の時代に、敢えて水谷さんが成し遂げたのが「本の出版に携わること」。
「本を出したい」という元祖 鯱もなか本店の専務取締役の思いを聞き、自身が新卒入社し長年の縁がある出版社にかけあったのがきっかけ。人脈形成や思考の転換などのヒントになる話題が多く、事業継承者や起業家に人気の1冊となっている。
フリーライターになるには
これが売れっ子ライターの7つ道具。
まずはPC、リモート会議用のイヤホンも。「ワイヤレスは急に繋がらなくなるトラブルもあって……なので有線も欠かさず持ってます。携帯バッテリーも必要ですね。」他にもインタビュー用のレコーダーなどガジェット類は推しメンのポーチにまとめている。
「最初の頃はざっくりと大味のオファーが多くて『どんなことを書けばいいの?』と戸惑うこともあると思います。そんな時はこちらからより具体的なモノを作れるように色んな質問をしてイメージを絞るといいですよ。ターゲットを意識することも大切。ふんわりしたものを返しているうちは次の仕事には続かないかもしれません。
文章は誰でも書けるものだけど『そこに値段が付く意味』を考えます。他の人が書くのと私が書くのとでは、どこがどう違うといいのか、ということを見つけます。
あとはやっぱり、毎回『相手の期待以上のものにして返すこと』ですね。自分なりのアイデアを必ず足すんです。『言われたことだけじゃなくて、あともう1つ』というのがあると、次のオファーに繋がるんじゃないかな。」