今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
岩と潮
今週のさそり座は、見えないものと見えるもののあいだに立ち塞がってきた壁や障害物がおのずとひらけていくような星回り。
『夏潮の飛沫くを隠れ岩と呼ぶ』(廣瀬直人)という句のごとし。
掲句は、「夏潮」という季節的な躍動のなかで、本来なら無機物であるはずの岩が、夏の日射しと飛沫のきらめきをまとい、潮のリズムに溶け込むうちに、これまで無視されてきたようなリアリティの一部が、「隠れ岩」という名を持つ確かな「存在者」へと変貌する決定的瞬間を捉えたのだとも言えます。
あなたもまた、これまで自分でもどこかでなかったことにしてしまっていた現実が、良くも悪くも視界にあらわれ、露呈していくような流れに入っていくことでしょう。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
輝く光は深い闇よ
今週のいて座は、どこか乾いたユーモアをもって身近な文脈や世相の流れに逆行していこうとするような星回り。
日本が高度経済成長期のとば口に立った1957年、深沢七郎の『楢山節考』という小説がベストセラーとなりました。それは「姥捨て伝説」をモチーフに、ある山村の飢餓寸前ともいえる人々の姿を描いたもので、どこか浮き足立っていた当時の世相とはまったく逆行した内容でした。
「死んじゃったらそれまで」だし、どこかで生きる喜びを徹底的に突き放したような視点から書かれた作品を、「豊かな日本」の入口に立っていた多くの日本人がすすんで読んでいた訳ですから、当時の人たちは現代の日本人よりよっぽど人生のなんたるかを分かっていたように思います。
あなたもまた、今の自分に足りないものを補うべく、できるだけこの世のごたごたを超越した視点に立っていきたいところです。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自己啓発から哲学へ
今週のやぎ座は、魂を軽やかにしてくれるような透明な夜風を会話の中に呼び込んでいくような星回り。
『風生と死の話して涼しさよ』(高浜虚子)という句のごとし。
ある日、作者の盟友である富安風生がぽつりと告白した。「近頃、死ぬのが怖くて、夜も眠れない」と。ふだんは飄々と俳句を詠む仲間が、死を前にしてふと露わにした弱さ。それに対し作者は「私は死ぬことがまったく怖くない」と淡々と語ったのだとか。すると不思議なことに、風生はこの対話がきっかけでノイローゼが治ってしまったと言うのです。
あなたもまた、魂がひらりと衣を脱いだような一瞬の無垢を経験していくことになるかも知れません。