すぐに人をバカにしたり、見下してくる人がいます。ただひたすら性格が悪いのか、なにかコンプレックスの裏返しなのか。言葉や表情から「バカにされてるな」が伝わると、気分が悪く、しんどいものですよね。人をバカにする人というのは、なぜこのような言動を取るのでしょうか。人をバカにする人の心理と対処法を、心理学者の平松隆円さんに教えていただきます。
平松隆円(化粧心理学者)
ただ会話をしているだけでも、相手を押さえつけようとする“高圧的な人”っていますよね。すぐあげ足を取ってきたり、自分のほうが物知りといわんばかりに会話をさえぎって自分の話をしてきたり、否定してきたりという人もいます。
ひとことでいえば、「マウンティング」してくる人です。
「マウンティング」とはもともと、「サルなどの霊長類が敵の上にまたがり、優位性を示す行動」を指す言葉でしたが、2014年に放送されたテレビドラマ『ファーストクラス』などをきっかけに、“人が他者に対して自分の優位性を誇示する行動”の意味で使われることが増えました。
このマウンティング、ある意味で人をバカにしているともいえますが、そんな上から目線な人の心理と対処法について、今回は考えていきましょう。
人をバカにする人の内面
人をバカにする人というのは、どんな心理でそうした言動を取るのでしょうか。
自分に自信がない
意外かもしれませんが、自分に自信がないために、相手をバカにするという言動を取る人がいます。
勉強やスポーツの試合などでも、自分に自信がある人は、正々堂々と勝負を挑むことができますが、自分に自信がないと、姑息な手段を取ってしまうことがあるでしょう。それと同じなんです。
コンプレックスがある
たとえば、10のうち8は自信があっても残りの2に自信がない。そんな人はめずしくはありません。この残りの2が、たとえば“苦手”という程度の自信のなさなのか、コンプレックス(=劣等感)としての自信のなさなのかには、大きなちがいがあります。
高坂康雅らによる「青年期における劣等感と競争心との関連」(※)という研究によると、“コンプレックスと競争心は関係している”といわれています。コンプレックスを感じている人ほど、誰かに勝つことで自分の存在を他者に認めてもらおうとします。
つまり、コンプレックスがあるからこそ、誰かをバカにし、そして“自分のほうが上”だと周囲に示すことで、自分の存在を他者に認めてもらおうとしているわけです。
(※)『筑波大学心理学研究』2008
人よりも優位に立ちたい
“他人よりも優位に立ちたい”というのは、他人をバカにする人の基本的な心理かもしれません。優位に立つ方法は、さまざまです。
たとえば、インスタ映えする場所に行って写真を撮って投稿するとか、高級ブランドのファッションを身につけるとか。他人と自分とを差別化し、「私はあなたとはちがうのよ」と優位に立つことができます。
ただ、それはなかなか時間もお金もかかること。そう考えると、一番手っ取り早いのが、“人をバカにする”という行動です。相手を下に落とすだけですむのですから。
自己主張が強い
“人より優位に立ちたい”というのに通じるのが、“自己主張が強い”ということ。
先ほどのインスタ映え写真とか、ブランドファッションも、ある種の自己主張ですよね。“一目置かれる存在になりたい”という自己主張の強さが、人をバカにするという行動につながるのです。
バカにする人は、自分以外全員、下に見ているの?
ところで今さらなのですが、この“見下す”とか“他人をバカにする”という行動は、専門的には、「他者軽視傾向」とよばれています。要は、他者の評価を下げる(=他者を過小評価する)ことによって有能感を得ようとすることです。
いくつあてはまる? あなたの「他者軽視傾向」をチェック
次の質問に、自分がいくつあてはまるか数えてみてください。
1.他人に対して、「なぜこんな簡単なことがわからないんだろう」と感じる
2.会議や話し合いで、無意味な発言をする人が多いと思う
3.たいした能力を持たないのに、出世をしている人が多いと思う
4.他人を見ていて「こういう人が社会をダメにしている」と感じる
5.他人の仕事を見ていると、要領が悪いと感じる
6.私の意見が通らなかったとき、相手の理解力が足りないと感じる
7.世の中は、常識のない人が多すぎると思う。
8.周囲の人のセンスの悪さや感性の鈍さが気になる
9.大切な仕事を任せられるような人が、私のまわりにはいない
10.企業では、実力よりも勤続年数や運で出世をしている人が多いと思う
あてはまる数が多いほど、他者軽視傾向が強いといえます。つまり、あてはまった数が多いという人は、知らず知らずのうちに、周囲の人をバカにしていることがあるのかもしれません。
ちなみに、情緒的に不安定な人、協調性が低い人、他人への共感性が低い人も、他者軽視傾向が強いとされています。