円通寺 失われかけた極上の借景
円通寺は、江戸時代初期に、後水尾上皇(ごみずのおじょうこう)が修学院離宮に移る前に住まわれた「幡枝(はたえだ)離宮」の跡で、「幡枝小御所」「幡枝茶園」とも呼ばれていました。
円通寺の借景庭園
客殿前の枯山水庭園は、「借景庭園」の代表作の一つに数えられます。「借景」というのは、山などの自然をあたかも庭園の一部のように背景として取り込む作庭手法のこと。
円通寺庭園が「借景」とするのは比叡山。庭園に向って腰を下ろすと、柱と柱の間に、生垣と樹木と比叡山が、あたかも一幅の絵のように融和して見えます。後水尾上皇は、比叡山が美しく見えるこの地を選ぶのに12年もの歳月を費やしたそうです。
近年、この庭園の景観を破壊するマンション建設計画が持ち上がり、多くの人が「もう駄目だ」と思ったそうですが、反対運動などの甲斐あり、計画は中止となりました。
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■円通寺
住所:京都市左京区岩倉幡枝町389
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線「北山」駅又は「国際会館」駅下車、タクシー約5分。バスは本数が少ないのでおすすめできません。
地図・拝観案内 → 京都観光研究所 円通寺
龍源院(大徳寺塔頭) 極小の宇宙
洛北の紫野(むらさきの)の地に、大徳寺という大きな禅寺があります。
大徳寺『金毛閣』
『金毛閣(きんもうかく)』と呼ばれる山門改修にあたり、千利休が、自身の木像を山門二階に置き、その股下を秀吉に通らせたことで怒りをかい、それが切腹せざるをえなくなった原因のひとつであるといわれています。
また、昔話に出てくる頓智(とんち)で有名な一休さんのモデルにもなった、一休宗純(いっきゅうそうじゅん)が住職を務めた寺としても知られています。
龍源院『東滴壺』
大徳寺には、数多くの塔頭(たっちゅう)がありますが、そのひとつ、龍源院にある、我が国最小の石庭といわれるのが『東滴壺(とうてきこ)』という名前の壺庭。
廊下を進んでいくと方丈の東に、まるで建物と建物のあいだに「うっかり」できてしまったような、ほんの狭い空間があり、そこにその庭はあります。
波のない静かな水面に、ポツンと滴った水滴から、しだいに広がっていく波紋。表現しているのは、恐らく、ただそれだけのこと。
しかし、見ているうちに、このわずか4坪の空間に、宇宙の無限の広がりを感じたかと思うと、次の瞬間には、底なしの深淵に吸い込まれそうになったりと、なんとも不思議な庭です。
龍源院と同じく、大徳寺の塔頭・大仙院の庭も、見るべき価値の高い庭です。
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■龍源院
住所:京都市北区紫野大徳寺町82
アクセス:京都駅より市バス206系統に乗車し、「大徳寺前」下車
地図・拝観案内 → 京都観光Navi 龍源院
東福寺 アーティスティックな現代庭園
紅葉の名所としても知られる東福寺。お寺の名前は、奈良の東大寺から「東」、興福寺から「福」の一文字ずつをいただいたのだそうです。
このお寺で、ぜひとも拝観したいのが『八相の庭』と命名されたモダンな庭。昭和14年に重森三玲(しげもりみれい)氏が作庭したもので、方丈の東西南北に、それぞれ趣の異なる4つの庭が配されています。