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都心の店舗併用住宅神楽坂の路地裏でお茶の愉しみを伝える

インテリア

「気軽に茶会の雰囲気を体感してもらう場所をつくりたい」と考えていた塚田玲実さん。思いを実現する場所として神楽坂の地を選び、店舗併用住宅で「神楽坂 和茶」を営んでいる。

地元の人や観光客で賑わう神楽坂通りから1本入った閑静な住宅街の一角。控えめな木の看板を目印に竹垣に囲まれた細いアプローチを進むと、「神楽坂 和茶」の入り口にたどり着く。

「神楽坂 和茶」

引き戸を開けると、店内には4畳半の茶室があり、周りを囲むようにL字型の土間が広がっている。ここは、店主の塚田玲実さんが、茶室のある空間で気軽にお茶を愉しんでほしいという思いから生まれたカフェだ。
「『どうしてみんなお茶を習うんだろう?』と疑問に思ったことがきっかけで、30代から茶道を習い始めました。その後、茶道の先生の茶室をお借りして、茶会や茶事をまったく知らない人に体験してもらう催しを開いていたら、それが楽しくなってしまって」と話す塚田さん。次第に、いつか気軽に茶会を体験してお茶を愉しんでもらえる場所をつくりたいと考えるようになったそうだ。
その思いを実現する場として選んだのは、東京・神楽坂。「大人の街で、飲食店が多くて、お店を出す規模としてもちょうどいい場所かなと思って。最初からピンポイントで探しました」と振り返る。不動産関係のお仕事に就くご主人とともに、1年ほどかけてインターネットや不動産屋で情報を収集。そうして出会ったのが、賑やかな通りから奥へ入った隠れ家のような場所。「もうここしかないよね、とすぐに決めました」(塚田さん)。

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1階が店舗。4畳半の茶室を、テーブル席のある土間がL字型に囲むという配置。

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床の間には知人から譲り受けた「花月織」の軸や、鳥の形の香合が。季節ごとのしつらえも、訪れる人の目を楽しませる。

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茶事に欠かせないつくばいを土間の一角に。茶室に入る前に、手や口を清める役割がある。

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熊本産の和紅茶と、米麹100%・砂糖不使用の甘麹「米の花」。発酵マイスター市村和美さんの手作りで、旬の果物とともに味わうお店の人気スイーツ。

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徳島県の阿波晩茶と湯布院の「ジャズ羊羹classic」。その時々に塚田さんが選んだおいしいお菓子がメニューに。

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茶室の畳の上で、お抹茶と上生菓子を気軽に楽しむことができるのも魅力。写真のセットで1300円(税込)。

3階建ての塚田邸は、1階がお店、2階と3階が夫妻の自宅というつくり。2階に上がると、1階の茶室の雰囲気とは異なるモダンな空間が広がっている。
「2階は窓もあえて小さくして、少し暗く、目が落ち着くように設計者の方と考えました。コンパクトなリビングなので、以前の住まいで使っていた家具も全部処分したんです」と塚田さん。そんなシンプルな空間で存在感を放つのが、重厚な大谷石の壁だ。「主人がとてもこだわって選びました。2階の主役はこの壁だね、と話しています」(塚田さん)。

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2階のリビングはベッドルームも兼ねている。写真左が大谷石の壁。溝加工されているため、モダンな印象だ。

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大谷石の壁の向こうに収納や洗面室、浴室などの水回りが配されている。

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洗面室はシンプルなつくりながら、床のタイルにこだわりが光る。

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明るくて清潔感のある浴室。

一方3階に上がると、ほの暗い2階とは対象的に、大きな開口部から光が差し込む明るい空間が広がっている。3階にダイニングキッチンだけを配置するというちょっと大胆なプランは、ご主人のアイデアなのだそう。「最初に土地を見に来た時から、『目線が抜ける3階にキッチンを持ってこよう』と言っていたんです」と塚田さん。周囲の建物より高い位置に窓があるため、障子を開け放つと遠くまで見渡せて開放感もある。
中央に配されたアイランドキッチンは、トーヨーキッチンのもの。ダイニングテーブルも兼ねる特注のステンレスワークトップは、1260×2440mmという圧巻の大きさ。この大きさを生かして、和菓子づくり体験などワークショップの場としても使っているそうだ。
また、マーブル模様が入ったヘキサゴンタイルの床もご主人のこだわり。「タイルショップを何軒も回って気に入ったものを見つけました」と塚田さん。
1階の店舗は土間と畳、2階のリビングはフローリング、3階のダイニングキッチンはタイルと床の素材がすべて異なることも、階ごとに雰囲気の異なる空間を生み出している要因だろう。

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3階のダイニングキッチン。スタイリッシュなキッチンと床のヘキサゴンタイル、障子が絶妙な組み合わせ。

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大きなキッチンは、ふだんの食事だけでなく、お客様を招いたワークショップやデモンストレーションの場としても活用。

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