意外な大きさに驚く『西郷隆盛像』。足元には日本近代史に残した彼の功績が綴られている
この階段を上がりきるとまず見えてくるのが、上野のシンボル『西郷隆盛像』。西郷さんの明治維新に尽力した功績をたたえて作られた銅像は、普段着姿で愛犬・ツンとともに立ち、上野の町を見下ろしています。彫刻家で詩人の高村光太郎の父、高村光雲の作品です。
西郷さんに別れを告げたら、芸術の森・上野公園の奥に入っていきましょう。木が生い茂り、緑のアーチの下を歩いているかのような気分にさせてくれるこの公園は、春は桜、夏は蓮、秋は紅葉、冬は牡丹など四季折々の植物が楽しめます。
さて西郷隆盛像は公園の一番南に位置しますが、北へ歩くと見えてくるのが、西洋美術を専門とする国内唯一の国立美術館『国立西洋美術館』、その隣が国立の総合科学博物館『国立科学博物館』。そして一番北に位置するのが日本で一番収蔵品が多い博物館『東京国立博物館』です。
とにかく、いつでも魅力的な展覧会が開催されている上野の美術館、博物館。時間が許すならばひとつぐらい入場したいところですが、実はこの美術館たち、中に入らなくとも建物外観だけで十分楽しめるのです。
登録が決定してからは所蔵作品と並んで建物にも注目が集まる『国立西洋美術館』
例えば国立西洋美術館の本館は20世紀を代表するスイス生まれの建築家、ル・コルビュジエの設計で、2016年7月17日に世界遺産への登録が決まった建物。入口付近の柱(ピロティ)や外壁などにコルビュジエ建築の特徴が現れているそうです。
また国立科学博物館では、出口に地球上に現存する最大の生物・シロナガスクジラ(全長30m)の原寸大模型が展示され、さらに建物を回りこんだ裏側ではこちらも野外に、日本初の人工衛星を打ち上げたロケットランチャーの現物が展示されています。
東京国立博物館には5つの展示館があり、それぞれの個性を発揮していますが、特に『表慶館』は明治末期の洋風建築を代表する建物。日本初の本格的な美術館で国の重要文化財に指定されています。
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■国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
アクセス:東京メトロ銀座線『上野』駅より徒歩8分
■国立科学博物館
住所:東京都台東区上野公園7-20
アクセス:東京メトロ銀座線『上野』駅より徒歩10分
■東京国立博物館
住所:東京都台東区上野公園13-9
アクセス:東京メトロ銀座線『上野』駅より徒歩15分
14:00~15:00 明治の社交場、上野精養軒でティータイム
不忍池を一望できる高台に建つ『上野精養軒』。結婚式場としてもお馴染み
さて東京ドーム11個分の公園内を端から端まで歩けば、そろそろ一息つきたいところ。各美術館、博物館にも素敵なカフェが併設されていますが、来館者でどこもいっぱい……。そんな中、喧騒を離れてちょっとほっとできるのが、上野公園の中央あたりに位置するフランス料理の老舗『上野精養軒』です。
上野公園内の社交場として、岩倉具視などの働きかけで誕生した上野精養軒。オープンした明治9年当時は貴族たちが詰め掛け、鹿鳴館時代の人気スポットとして華やかな時代を駆け抜けてきました。文明開化のシンボル的存在だっただけあって、その立地は最高。光溢れる『カフェラン ランドーレ』で、目の前に広がる上野の緑を愛でながら、お茶を頂いてみてはいかがでしょうか。こちらでは食事はもちろん、お茶だけの利用もOKです。
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■上野精養軒
住所:東京都台東区上野公園4-58
アクセス:東京メトロ銀座線『上野』駅より徒歩5分
15:00~16:00 「医薬の神様」と東京の琵琶湖・不忍池
健康を祈る『五條天神社』には平日でも参拝の人が絶えない
そろそろこのコースもラストスパート。東京メトロ上野駅へ向かいましょう。上野精養軒を出てしばらく行くと、右手に朱塗りの鳥居が連なっているのが見えてきます。ここは1900年前に祀られたといわれる『五條天神社』。病を治す薬と方法を伝えた神様を祀っている為、古くから医薬の神様として信仰されていて、無病息災を願う人々が訪れる神社です。
お参りをした後、鳥居とは反対方面に出れば、そこは『不忍池』。琵琶湖に見立てて池の真ん中に島が築かれ、そこに弁天堂が作られたという不忍池は、春はほとりを彩る桜が、そして夏は一面の蓮に覆われる“絵になる池”です。池の周りを歩くと、色んな表情の不忍池が見えてきますが、やはり池の水面に浮かぶように見える弁天堂がベストビューなのではないでしょうか。弁天堂へかかる天龍橋のたもとから南へ200mほど歩けば、東京メトロの入り口が見つかります。