3.おうち時間増量で、読み返したい長編名作
名作を名作にしているのは、その普遍性。世代を超えた感動がそこにあるからではないでしょうか。未読の方はもちろん、家で過ごす時間が増えた今あらためて読みたい、誰かと語りあいたくなる作品をピックアップ。
『キングダム』原泰久/集英社/1~58巻 連載中
©原泰久/集英社
辛抱は、未来に繋がる
先日、昨年大ヒットした実写映画化の第二弾の製作が発表され、再注目されている『キングダム』。舞台は紀元前3世紀、中国春秋戦国時代。後の始皇帝となる秦王・嬴政と、孤児から身一つで天下の大将軍を目指して爆進する、主人公・信の活躍を中心に描かれた歴史大作だ。
実力差があっても窮地に陥っても、己や仲間を信じ、周囲に檄を飛ばして勝利を導く信をはじめとした名だたる武将たちの姿は、読者の心を奮い立たせてくれる。
長引く自粛生活で腐っちゃいそうなとき、グっとくるのはこんなセリフだろう。待機を命じられて不満げな部下に「こういう戦いもあんだろーが! ぜってー俺らにもでっけェ見せ場がくる だからそん時まで、大人な感じで…待機しとくんだバカヤロォ」とたしなめるシーン。誰よりも戦場を駆けたい欲を我慢した信は、出陣後、敵を蹴散らすだけでなく、作戦指示まで行う獅子奮迅の活躍をみせた。苦しいときほど、心は熱く冷静に。信の言葉はシンプルなぶん、よく刺さる。
『SLAM DUNK 新装再編版』井上雄彦/集英社 全20巻
流されず“今”を生きるためのバイブル
「あきらめたらそこで試合終了だよ」「バスケがしたいです」など、数々の名セリフを生んだ本作。バスケ好きの女子高生にひとめボレし、バスケ部に入部した桜木花道は、初心者ながらも、高い身体能力と積み重ねた努力を武器に驚異的な速さで選手として成長していく。ライバルとぶつかり仲間たちと切磋琢磨し合いながら、強豪校相手に激戦を繰り広げていく、バスケ漫画の金字塔。
本作のすごさは、いつ読んでも“あの頃の”熱い気持ちを思い出させてくれるところだ。誰だって、何かに夢中になった経験があるだろう。ただうまくなりたくて、それだけを考えて過ごしていたあの頃は、確かに“今”を生きていた。では、社会人になった“今”は? 仕事や義務に追われ、惰性で一日を送ってはいないだろうか。「オレに今できることをやるよ‼ やってやる‼」(by 海南戦)「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本のときか? オレは今なんだよ‼」(by 山王工戦)。桜木の言葉は、いつだって激アツだ。自分やチームが窮地に立たされた状況にあっても、今、自分にできることを実行し続ける。
『ガラスの仮面1』美内すずえ/プロダクションベルスタジオ/1~49巻 連載中
今こそ挑もう! コミック界のサグラダ・ファミリア
1976年に連載が始まり、44年目の現在も連載中の伝説的作品。伝説の女優・月影千草に演技の才能を見出された平凡な少女、北島マヤが、数々の試練を乗り越え、“女優としての才能”を開花させていく。マヤのライバルは芸能界のサラブレット・姫川亜弓。伝説の演目『紅天女』の主演女優の座を手にするため、火花を散らす二人の演技対決も見ものだ。
ストーリー以外にも見どころは満載。月影千草がマヤの演技を見て思わず口から出た「恐ろしい子!」のセリフや、登場人物が白目になる描写は、CMなどにも使われているので未読の方もご存知だろう(最新刊までに約1,300回も白目のシーンがあったとか……恐ろしい作品!)。また、長期連載だが劇中は7年しか時間が過ぎていないにもかかわらず、42巻にガラケー、47巻ではスマートフォンが登場し、読者に衝撃を与えた(それまでは固定電話のみ)。そのうち亜弓が体調管理用にスマートウォッチを使い出すんじゃ……と、密かに期待。
やはり、時空を超える波乱万丈なマヤの物語から目が離せない。
4.現実を忘れてキュンキュンしたい! おすすめの恋愛マンガ
恋愛経験が積み重なるほど、結婚を意識するほど、打算的に恋することが増えていませんか? 恋をしているだけで胸がいっぱいになっていた、あの頃のピュアなときめきに浸れる作品を紹介。
『素敵な彼氏』河原和音/集英社/1~12巻 連載中
©河原和音/集英社
ミステリアスなアプローチに、即落ち必至?
“彼氏”という存在に大きな憧れを持つ小桜ののか。高校生になったら自然とできると思っていたが、期待虚しく彼氏はできず……。ある日、友達に誘われて行った合コンで知り合った桐山直也に「一生カレシできなそうだなあ」と言われて落ち込んでしまう。しかし、この出会いが夢への第一歩だった。
優しいけれど感情の読めないミステリアス男子・桐山と、ウソがつけない天然系女子・ののかが少しずつ距離を縮めていく様子にニヤニヤが止まらない。二人が付き合っていない時から、「ヒマだから」と困っているののかに手を差し伸べ、「気が向いたから」と自然な形で寄り添う桐山に、恋愛経験の乏しいののかをのぞく、多くの読者が即落ちだ(筆者調べ)。尽くすくせに本心を見せるのは苦手で、なのに気持ちを伝えるときはストレート。おまけにくっつきたがり属性(キス魔ともいう)だなんて、一体どれほど我々を骨抜きにするつもりなの……⁉
ソロでも素敵な桐山は、カップルになったあとも、どんどん素敵をバージョンアップしていくのでご注意ください。
『ハニーレモンソーダ』村田真優/集英社/1~13巻 連載中
相手に配慮することのカッコよさ
石森羽花、15歳。中学時代のあだ名は“石”。話すのが苦手すぎて「おはよう」さえうまく言えない。声をかけられてもリアクションひとつとれずにフリーズ。そんな羽花が、クラスの人気者、三浦界によって変わっていく。
「どうせ地味ッコがイケメンに助けられて、いつのまにか恋される話なんでしょ?」と思うことなかれ。確かにヒロインは地味だが、素直でものすごく芯が強い。金髪をなびかせながら平然と自分を貫くイケメン男子、界に助けられるたび、努力して自分の世界を変えていくのだ。界は努力することを笑わない。普段はクールだが、必要ならば、こんな言葉もかける。“石”とからかわれて落ち込む羽花に「石でも、おまえは宝石なんだよ」と。……甘――い! 「配慮とは何か」を、いちいち体現しているところもいい。“好きだから”と流されずにその都度、相手の気持ちを確認。見守る忍耐力も、大人の助言も受け入れる度量もある。惚れてまうやろ(読者が)。
配慮のカケラもない大人メンズも多い世の中ですが、諦めと打算の恋愛に疲れたら、本作でピュアな恋心を思い出してほしい。