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「私は私だから」多部未華子が大切にしてきた自分軸

常に自分の居心地の良い場所にいる

彼女の言葉を聞いて自分自身のことを振り返った。私はずっと、誰かの描く“私”であろうとしてきた。だから、満たされなかったのかも、と。

ずっとずっとかわいいものが好きだった。でも、小学生の時に転校した先で「都会から来た人」という扱いをされたくなかったから、私はスカートをはくことをやめて、ピンクのものを持つのをやめた。みんなと同じようなパーカーを着て、本当は「絵を描いていたい」と思いながらも泥だらけになって遊び、早くなじもうと努めた。

会社員だった時、毎月のノルマを達成して、上司から認められる“私”であろうとした。でも、いざノルマを達成して“優秀”だと認められても、表彰されても何もうれしくなかった。「皆さんのおかげで、こんなにすてきな賞をいただけました」と話しながらも、「こんなものか」とどこか冷めた自分がいた。

そうか……私は私を生きてきたようで、誰かからの見られ方に応えて生きてきたのか。

世間では「嫌われてもいいじゃない。自分を好いてくれる人から好かれたらいいじゃない」なんて言う人もいるけど、私はいまだに嫌われるのが怖い。

いい大人なのに、ダサいかもしれないけど、本音を言うとできるだけ誰にも嫌われずに生きていきたい。

だから「期待しないで」と言える彼女が、まぶしく見えたのだ。

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嫌われたくない、彼女はそんなふうに思ったことはないのだろうか。

「うーん……全くないですね。正直、周りの子のことはあまり見ずに、できる限り自分の過ごしたいように生きてきました。学生時代もどこか一つのグループだけに属すようなこともなかったんですよ。いろんな子と接して、居心地の良い場所にいたと思います」

「居心地の良い場所」——映画の中の直実のように、自分の幸せに自信を持てない女性に対してのメッセージを求めた際にも、彼女は「居心地の良い場所は自分で作るしかないと思います」と言ってくれた。

きっと、彼女が自分自身の中で大切にしてきた芯の一つなのだろう。

「大丈夫! あなたの方が、絶対に勝ってるから」

多部さんが私を励ます言葉を口にしてくれてもなお、私はまだ「彼女にはなれない」「そんなの無理」と思ってしまう。

だって、自分にとっての居心地の良い場所を見つけられる人が、この世に何人いるのだろう。

今の仕事は好きだけど、職場の人間関係に苦しむ人、簡単には縁を切れない身近な人との関係性に悩む人がたくさんいるのを私は知っている。

そんなふうに居心地の良い場所に身を置けない人たちは、ずっと“窮屈さ”を感じていなきゃだめなのだろうか。

そんな疑問をぶつけると「難しすぎて、宿題にしたい〜」と笑いながら、頭を抱えた。そして、しばしの沈黙を経て、次のように語り出した。

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「確かに、会社員をやっている友人の中にも、仕事は好きだけど職場の人間関係に悩んでいる子はいます。苦手な後輩がいるとか、上司に嫌なことをされたとか。

そんな友人たちから相談を受けた時は、『大丈夫! きっとあなたの方が仕事もできるはずだし、勝ってるから! 自信持ちなって!』って言っちゃいますね。相手のことを知りもしないのに、無責任なんですけど(笑)」

「性格悪いですかね?」と、いたずらそうに笑う彼女。そのあまりにも力強い言葉と爽快っぷりに、私は声を上げて笑ってしまった。

「私って驚くほど負けず嫌いなんです。なので、苦手な人がいたとしても、そこばかりを気にしてしまうと時間がもったいないと思ってしまうので、気にしないことにします。でも、負けず嫌いなので、この人より私の方が勝っていることがあるはずだって思い込むんです。

だから人にもそういう励まし方しかできないんですよね。いいんです、現実はそうじゃなかったとしても。“負けない何か”を見つけて、自信満々に振る舞っちゃえばいいんです」

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話しているうちに、うじうじしている自分がばからしくなってきた。

「大丈夫! 相手がどんな人かは分からないけど、絶対に勝ってる!」こんなにも全女子に刺さるビタミンワードがあるだろうか。

自信を持つことって、めちゃくちゃかっこいい。

繊細そうな雰囲気からは想像もできないくらい、折れない芯を持ち、よく笑う彼女と話していたら、何だかすっごく元気が出てきた。

もっと自分に都合良く、自分を生きてみたい。

夏から秋へと移り変わる季節の夕方。まだ明るい夜の空の下を歩く私の足取りは、軽やかだった。

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