今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
運命の三叉路
今週のさそり座は、刹那的な幸福を追求していこうとするような星回り。
背の低い直方体の紙に包まれたままの「バター」も、冷蔵庫から出して温かい室内に置きっぱなしてすればいつかは融けてしまう。「冬ぬくしバターは紙に包まれて」(中村安伸)には、不安と心地よさがないまぜになったような独特のニュアンスがあり、明らかにいつもは寒いはずの冬の最中に暖かい一日の、ほっとした、幸せな気分との取り合わせが意識されている一句です。
幸福というものも、形に囲い込もうとしたり、いつまでも同じ形に執着してしまえば、途端に味気なくつまらないものになってしまう訳で、その意味で料理も人生も、溶けかけや崩れかけが一番おいしく感じるものなのかもしれない。
そうすると、紙に包まれてあるバターにただよう不安にもどこか親近感さえ湧いてくる一方で、温暖化の一途をたどり、過剰にあたためられつつある地球の現状に改めて不気さを感じてしまう。あなたもまた、情感が溢れでてくる一瞬のうちにこそ、こころの真実を見出していくことができるはず。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
問いこそ力の源
今週のいて座は、割りきれない問いを持ち続けることの大切さを改めて思い出していくような星回り。
精神科医ロバート・コールズの『子どもの神秘体験 生と死、神・宇宙をめぐる証言』という本に、とあるイスラム教の子どものエピソードがありました。その子はいじめられっ子でしたが、何とか自分を強くしてほしいと頼んだら、アッラーが力を与えてくれたのか、ぐっと相手を睨みつけることが出来たのだと語ったと言います。
けれど話はそこで終わらずに、いじめられっ子が自分を強くしてくださいと神に祈ったらどうなのかという疑問が生まれ、これに答えてほしいとその子はアッラーに祈った。すると、神の声が聞こえてきて、「一生悩み続けていいのだ。悩みをしまいこんで忘れないよう祈りなさい」と語ったそう。神ならばもっと明快な答えを与えてくれると期待していた彼は、困惑してしまいます。
けれど、その後もしばらく考え続けるうちに、「悩み続けることに意味がある」ことを悟ったんだとか。ここには子どもたちが大人の体験するそれを超えた光を感じることがある一方で、大人の計り知れぬ闇をもまた経験しているのだという事実が垣間見れます。あなたも子どもに負けぬように、もう少し悩み続けてみてもいいのではないでしょうか。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
虚実を織り交ぜる
今週のやぎ座は、実際には交わされなかった会話や言葉にこそ重心を寄せていくような星回り。
「落葉道二度聞きとれずもう聞かず」(藤井あかり)は、落ち葉を踏みながら歩いている時のやり取りが詠まれている句。歩きながらぼそっと相手が何か言ったので一度聞き返し、もう一度聞き返したが、聞き取れなかった。まあいいか、とそっとほほえんで済ます。鳥が鳴く。もうこんなに時間が経っていたのかと気付き、歩いてきた道のりを思う。そんなある日の情景が詠まれています。
言葉は明確で分かりやすければいいという訳ではなく、会話もまたその内容よりも間の方が大切だったりする。会話の相手が気心の知れた仲であるほど、その度合いは高くなっていくように思うのです。
今週のあなたもまた、ある種のテレパシーが起きたり、そうした感度が高まっていきやすいかもしれません。