今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
複雑化と単純化のはざまで
今週のかに座は、決まったルールをなくすための工夫をコツコツ重ねていくような星回り。
最初の小説であり、後に映画化もされた『薔薇の名前』を48歳で出版したウンベルト・エーコ。彼は2008年のインタビューで「私は予定どおりに行動することができない。朝七時から夜中の三時まで、途中でサンドイッチを食べるだけで書き続けることもある。かと思うと、まったく書く必要を感じないこともあるんだ」と答えています。
考えてみれば、何かしら自分なりの決まったルーティンを確立するべきという思考の枠にとらわれることそのものが、かえって創造的な仕事の邪魔になってしまうことだってあるでしょう。彼はトイレでも電車のなかでも仕事ができ、泳いでいるときも風呂に入っているときも創作活動ができると話しています。
あなたもまた、こうでなければいけないというルーティンへの囚われを崩していきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
太陽は日々新た
今週のしし座は、いよいよ本領をあらわにしていくような星回り。
「死神の目をのがれつつ日日裸」の作者・清原枴童は、師の高浜虚子の斡旋で朝鮮半島に移住したり、福岡に帰ってきてからも家庭的な幸福に恵まれず、空襲で家を焼かれたりと、流転多き不運な人生を送った人。老いてなおそうした苦労のあとが句にも残っているところがあったようです。
掲句はどこか、堆積したかなしみの底がスッと抜けたような不思議な明るさを感じさせます。「日日裸」であるというのは単に無防備であるというより、いたずらに自己を主張したり、みずからの人生観を誰かに押しつけることも必要なく、ただしずかにこうして坐っているだけで十分である、という作者が得たひとつの到達でしょう。
それは枯れた弱弱しい孤独の奥に潜む、何物にも侵されることのない生命の充溢へのまなざしに他ならず、句を通して読む人を自然にそこへ連れ出してくれるような軽やかさがあります。あなたも小手先ではなく、もっと本質的なところから自分自身を表現していくとっかかりをつかんでいくことがテーマとなっていきそうです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
家具いらなくない?
今週のおとめ座は、人生から乱調をなくしていくための一工夫する星回り。
無政府主義者の大杉栄は、かつて「美は乱調にあり」と喝破しました。これは「カオス」という言葉の語源にこの世の始まりの姿である“深淵”という意味もあることを考えれば、一種のノスタルジー趣味と言えるのかもしれません。
ひるがえって、そうしたノスタルジーを粉砕していかんとするのが、簡素さやごまかしのないことを尊ぶおとめ座の本質であり、現代社会においてそうした本質を体現していくためのシンプルな方法として、和室に住むことが挙げられます。
木造は内装もシンプルかつ伝統的な和室であることが多く、大げさな家具はいらず布団とちゃぶ台が一つずつあればそれで生活は事足りるもの。こうした家具のない暮らしというのは、和風でしか味わえない特有の快感なのではないでしょうか。あなたもいつもより少し目線を低くして、地べたにゆっくり腰を下ろせるような時間を大切にしていくべし。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
精神的な脱皮
今週のてんびん座は、身も心も若返っていくような星回り。
明治以来、ロシア文学は日本人の間で読み継がれ愛されてきました。もちろん世の中にはブームというものがあり、ロシア文学の次はサルトルなどのフランス文学だなんだと、それなりに移り変わっていくものですが、「焼鳥焼酎露西亜文学に育まる」(瀧春一)はおそらく作者の若かりし頃にあった青春の情景を詠んだものでしょう。
焼き鳥をつまみながら、安い焼酎を呑み、ロシア文学談義に花を咲かせ、人間いかに生くるべきかを問う。そんな青春の3点セットも、中年期になれば車やゴルフやビジネス書へと代わり、語られる内容もおのずと変わっていくものですが、逆に言えば、みずからを変えるのにも、流行りのものを追うより、かつての青春3点セットを再び手に取る方がずっと有効なはずです。
そして「自らを育んでくれた」という率直な感慨は、つねに「自らを問い直さねばならない」という問題意識や追及と表裏の関係にあります。あなたもまた、一周まわった自分へのツッコミを賦活剤として投入してみるといいでしょう。