20・30代に比べて40代で圧倒的に少なくなったこと…それは甘えたり弱さを見せたりする機会ではないでしょうか?弱さや甘えをぐっと飲み込んで「大人の対応」をしたり、「強さ」という盾で自分を守ったり。そんな癖が知らずに身についている人も多いようです。一方で体力の衰えやホルモンバランスの乱れなど、40代女性に訪れる変化は単に「強い」だけでは乗り切れない場合も。今回は40代女性の「強さ」ついて考えていきます。
「お局さん」と呼ばれていた女性たちの気持ちが今になって分かる!
私が20代で会社員だった頃、「お局さん」という言葉をよく耳にしました。
ある程度年齢を重ねた、社歴の長い女性たちをそう呼んでたわけですが、この言葉の是非については、今ここでは問いません。
いま自分がその年代にいるのかと思うと時の流れを感じずにはいられません。当時私が抱いていた「お局さん」のイメージは、強い、性格や口調がキツイ、噂話が好き、意地悪、プライドが高い…など失礼ながらネガティブなものばかり。かつて会社員だった私は実際に「お局さん」的な女性の存在にビクビクしていたし、嫌味や嫉妬を感じるような言葉を受けながら「こういう女性にはなりたくないな」なんて思っていたものです。
時を経て今、あの頃分からなかった「お局さん」と呼ばれていた女性たちの気持ちが、勝手な想像ではあるけれど分かる気がしています。その余裕の無さや、行き場のない苛立ちも。実際に40代になった自分は、仕事量の多さと体力減退のはざまで悩むことが増えたり、ホルモンバランスの乱れによるイライラに悩まされたり、かつては漠然としていた将来の不安が現実味を帯びて怖くなったりしている。そうか、あの頃最強に見えたお局さんは、きっと不安や苛立ちを抱えながらも甘えることが難しかったのだろうな。強くいることで自己防衛していたのかも知れない…そんな風に想像をしてしまうのです。
責任が大きくなっていく世代
40代というのは多くの場合、それぞれの立場で責任が大きくなる世代です。家庭であれば親の責任、もしくは親が年老いて子としての責任を担う必要があったり、仕事でも責任ある立場にいる人も多いでしょう。そんな環境・経験が、人としての成長を促してくれる。でも一方で「強さ」を備えていないと乗り切れない場面が多いことも事実です。
もちろん20代でも30代でもそういった場面には遭遇してきたけれども、責任の大きさや質が明らかに違う。夢見がちな部分が薄れ、より現実的な選択が必要になってくる。一概に年齢で決めつけるのはナンセンスかも知れませんが、この年齢ならではの責任の重さというのはやはり存在します。それがこれまで築いてきたものの大きさに比例するのだと考えれば、憂うよりもむしろ喜ぶべきことなのでしょう。
成熟に必要な強さはどんな強さ?
では、今の私たちに「強さ」が必要だとしたら、どんな種類の強さが必要なのでしょう?私はヨガの講師ですが、ヨガのポーズにそのヒントがあると思っています。例えば片足で立つといったバランスのポーズ。バランスのポーズをとる時、特に日常から力強いタイプの人は、全身に力を入れてポーズをとろうとします。普段から肩や首に力を入れる癖があるので、下半身だけでなく上半身にも強く力が入ってしまう。一方で最小限の力でラクにポーズをとれる人もいます。そんなタイプの人のポーズは、下半身の必要な部分(軸足)と体幹のみに力を使い、他の部分はリラックスしていて柔らかい。
このふたつの強さ、どちらも「強い」ことには変わりないのですが、前者はエネルギーを多く使い継続が難しく、後者は最小限のエネルギー消費でより長く立っていられるといった特徴があります。若い頃はがむしゃらに頑張ることも必要だったし、全身に力ませるような強さも必要だったかも知れません。しかしながら成熟していくと、そういった強さには限界があることに気が付きます。継続性があって省エネな強さを持ち合わせていないと、体力的にも精神的にもきつくなってくる。成熟した強さとは、芯は強いけれど柔らかさのある、つまり後者の強さなのではないでしょうか。
そしてその成熟した強さというのは恐らく、自分と向き合うことでしか得られない強さなのではないかと感じています。人によって向き合うべき課題は異なるでしょうが、自己を受容したり、自分を大切に慈しむことで育つ強さなのではないでしょうか。人生経験を積んできた私たち40代女性に必要な強さ、これから手にするべき強さ。それはきっと、弱さを克服する強さでも、他を圧倒するような強さでもなく、自分を慈しみ受容していくといった優しく柔らかい強さなのではないかと思っています。
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★シリーズ「#40代のリアル」では、ヨガ講師でご自身もプレ更年期真っ只中の井上敦子さんが感じた40代の心と体の変化を、リアルな言葉で綴ります。