今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自分への帰り道
今週のさそり座は、いきいきとした生命力をみずからに吹き込んでいくような星回り。
ドリス・レッシングが1970年代に女性の自己発見について描いた『暮れなずむ女』では、キャリア・ウーマンになるより結婚を選んだケイトが、末の子供がついに家を出て独り立ちしたのをきっかけに、四十代半ばにして初めての仕事につこうとしていました。
それはミセス・ブラウンではなくケイト・フェレイラとしての人生への旅立ちを認めるパスポートのようなものであり、そこで彼女はみずからをスケールダウンさせて中流階級の主婦たちの一員に見えるように着込んでいた古い服を脱ぎ捨て、セクシーで洗練された服を買いました。しかし、ケイトはすぐにそれに飽きてしまうのです。
彼女は職場で評価されていましたが、どうしてもみんなの母親的役割についてしまっていることに気付き、その発見によって彼女は落ち込み、神経衰弱になってしまいます。しかしこの精神的混乱のなかで、彼女はついに未来は昨日の続きではなく、おてんばで、怖いもの知らずで、貪欲で、もちろんセクシーでもあった少女のころに中断してしまったところから、再び始まるのだという真理をやっと悟ることができたのでした。あなたも、花の開花に遅すぎるということはないのだと思い直していくべし。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
DNAのスイッチON
今週のいて座は、ふと我に返っていくような星回り。
さて、いよいよ12月です。あれもしなければ、これもしておかなければと、諸事雑務に追われ、自分を見失いがちになる月。「盛り上がり珠となる血や十二月」(渡辺鮎太)はそんな12月の慌ただしい空気感のなかで、ふいに我に返った瞬間をとらえた句と言えます。
忙しく動いている最中に、うかつにも何か鋭いもので手の指を突いてしまったのでしょう。「あっ」と意識を向けると、みるみるうちに血が「盛り上が」ってきたのを見て、それが「珠」のように美しいと感じたとき、作者はかまけていた目の前の雑事の一切を忘れて、自分には現に生きている生身の身体があることを思い出したのです。
大きな12月に、小さな血の珠を対比させつつ、それを起点に空気に飲まれていた自分に気づいて、いつもの自分に戻ることができた。それはまさに作者の感性とたまたまの偶然が重なった僥倖でしょう。あなたも、たまたまや偶然のきっかけを見逃すことなく、ほんらいの自分を取り戻していきたいところ。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
強さの呪縛
今週のやぎ座は、弱くていいじゃんと、自分をやさしく諭していくような星回り。
人を蹴落とせば孤独になる。そんな簡単なことも、実際に経験してみないとなかなか分からないものです。特に若いころは、とっとと何か目立った業績をあげたり、いつも何かに怒ってみせたりすることで、自分の価値があがったような気になり、それで中途半端に成功してしまったりすると、かえって後に引けなくなって、あっという間に中年になっていたりする。
でも思うように成功が続かず、活躍する場がなくなったり、仕事そのものが来なくなったりして、狼狽したり絶望したりしていると、ある日ふいに人間エキセントリックである必要も、どこにもない個性を光らせている必要も本当はないんだ、と気付くわけです。
弱い自分というのもいいのではないかと。国でも人でも、強い者というのは結局まわりに迷惑をかけますから。競争社会では、みな他人のことなど構わなくなり、弱い者から切り捨てられがちですが、弱いからこそ、誰かのことを真剣に思うことができるし、孤独から逃れられ、気持ちも豊かになるのかも知れません。あなたもまた、強さの呪縛から自分を改めて解き放っていきたいところ。