今週のさそり座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
縁と事象
今週のさそり座は、思わぬところから自分の世界が広がっていくような星回り。
倉敷の観光地区の外れに佇む「蟲文庫」のごとし。店主が知識なし予算なしから開業した「蟲文庫」は、売るべき本がまだあまりなく、お客さんが来なかった頃から様々な苦肉の策を繋いでいくことによって、その個性が花開いていきました。
店主はマニアックな商品を並べ、店の帳簿に座っているだけで、次から次へと色んなことが起きてきた店の歴史をふりかえって、南方熊楠の「縁と縁の錯綜するところに事象が生じる」という言葉を思い浮かべているのです。これは、どこか今週のさそり座にも相通じる指針となっているように思います。
今週のあなた自身もまた、たとえささやかで、ときにまったくどうしようもないものもあれど、少しでも自分に関係ある縁はどんどん引っ張りこんでいきたいところ。
今週のいて座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
道すがらの石けり遊び
今週のいて座は、まだ言葉になっていない領域をみずから切り開いていこうとするような星回り。
盲目である緒方句狂が詠んだ、「空耳か炉咄かるく手で押さへ」という句のごとし。この句は今まで囲炉裏を囲んで話していた声がぴたりと止まって、ただ外の凍るばかりの静寂と触れた瞬間の、ただ炉火ばかりが赤々と燃えて人びとの顔を照らしている、そんな冬の静けさをじつにうまく捉えています。
彼はいつどこで誰に囲まれようとも、日ごろからたえず静寂に人一倍神経を研ぎ澄まし、それゆえに盲目でありながら、生き生きとして豊かな言葉を沈黙から紡ぎ出し、目明きに伍してきびしい芸術の世界で堂々と歩を進めることができたのでしょう。
今週のあなたもまた、自分は何を伝えていきたいのか、そしてそのためにはどこに向けて精神を研ぎ澄ませていかなければならないのか、改めて問われていくことになりそうです。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
カオスとエロスがこんにちは
今週のやぎ座は、ロシア思想的な泥臭さを、みずからの思想の中心軸に添えていこうとするような星回り。
「下方への脱魂」への誘いのごとし。神秘主義的体験は、なにも現実の上に向かう方向ばかりではなく、現実の下に向かう方向にも成立しうる事実を、これまで数々の芸術家や詩人たちが身をもって示してきました。
人間は身を投げ出したい衝動を確かに持っているのであり、それは大地との一体化とも、「下方への脱魂」とも呼ばれてきましたし、例えばドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』において、ゾシマ長老の死後にアリョーシャが自分でもその理由が分からぬまま大地を抱きしめ、大地と接吻していたシーンに象徴的に表されてもいます。
今週のあなたもまた、魑魅魍魎として地上を這いずり回っていくべし。