あなたは、これまでに腸内検査を受けたことがあるでしょうか。腸活という言葉とともに腸の働きについて注目されていますが、腸内環境によって「痩せやすい体質か」もわかるとのこと。人生初の腸内検査を受けてみたら、ショックなことがわかりました……。
教えてくれたのは……みなと芝クリニック 川本徹院長
"メスをとれる内科"たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医よりも内科的な外科医をめざす。2010年に東京の三田駅近くにみなと芝クリニック開院後、現在の地でリニューアルオープン。内科や外科から、皮膚科、整形外科、胃腸内科、大腸肛門外科まで、幅広い診療を行っている。日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。
突然襲った悲劇
日頃から便秘でもなく自分の腸内環境には問題がない、と思っている方も多いかもしれません。私もそうでした。
しかし忘れもしない昨年の大晦日。育児や仕事に加えて、年末の掃除などで連日慌ただしく動き回っていたところ、夜中に腹部やお尻付近に鈍痛が。時間とともに痛みが増し、ひどい便秘で元旦から病院に駆け込むことに……。
ひどかったはずの腸内環境は、今はどうなっているのか。手軽に腸内検査が受けられるとのことでさっそく私も受けてみました。
母親の腸内環境が子どもに影響していた
腸内フローラ検査は自宅で検便し送るだけで腸内フローラの状態がわかる検査キットです。
2週間程度待って出た私の検査結果は、B判定。「改善の余地あり」とのことで、実際に詳しく医師の川本先生に聞いてみました。
――そもそも腸内フローラとは何でしょうか?
川本先生:腸内フローラは日本語でいうと腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と言います。実際に腸内にある細菌の数は500〜1,000種類と言われていて、100兆個くらいが大腸にあります。すべてが同じ菌ではなく、いろいろな種類の菌がグループごとにコロニーという集落を作ってポンポンと散りばめられた様子が、お花畑に似ているところから腸内フローラと言われています。
――菌の種類や数は一人ひとり異なるのですか。
川本先生:そうです。基本的には母親の腸内環境が子どもに影響していると考えられていますが、3歳くらいまでは食事や薬などの影響によって、菌の入れ替わりが激しく変化しやすいのです。
「ビフィズス菌が低い」。その影響は?
実際の検査結果
――ビフィズス菌が低めという検査結果が出ましたが、どんな影響があるんでしょうか?
川本先生:短鎖脂肪酸という言葉を聞いたことはありますか? これは腸内細菌によって作られる酸です。この短鎖脂肪酸は悪玉菌をやっつけたり、免疫のバリア機能を強化したり、代謝をよくしたりする働きがあるんです。
ビフィズス菌はこの短鎖脂肪酸を作るので、ビフィズス菌が少ないと短鎖脂肪酸が作られず、便秘症や生活習慣病、アレルギーにもなりやすくなる可能性があるんですね。
反対にビフィズス菌がある状態だと、生活習慣病や動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、癌などさまざまな病気になりにくいと言われています。
まさかの「痩せ菌」がない!?
実際の検査結果
川本先生:最近の分析でビフィズス菌や酪酸菌以外の菌の中に、痩せ菌と呼ばれるものがあることがわかってきました。検査結果の中にもあるように、「アッカーマンシア属」や「クリステンセネラ属」などが痩せ菌と言われています。
――私はどちらも「なし」とありますね……。
川本先生:日本人の中には、ありという人は少ないですよ。痩せ菌と呼ばれる腸内細菌が多い人は、代謝がよく太りにくい、ということが言えます。反対に、悪玉菌の中にはデブ菌と言われ糖尿病を引き起こす菌もあるんですよ。
ただこれらの痩せ菌がなくても、ビフィズス菌などの善玉菌があれば、極端に太りやすい体質というわけではありません。ビフィズス菌も脂肪燃焼促進や脂肪蓄積抑制などの働きをする「短鎖脂肪酸」を作り出すため、痩せ菌としても今注目されています。