今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
赤信号みんなで渡れば怖くない?
今週のかに座は、搾取が当たり前の世界と適切に距離をとり、対等に渡りあっていくための戦略を粘り強く養っていこうとするような星回り。
例えば、世間話というのは天気の話だったり昨日見たテレビの話だったり、必ず「みんな」が分かるようなことしか言及されず、その当たり障りなくスムーズなコミュニケーションに割って入って「本当にそうか?」「本当はどう思ってるの?」などと口を挟むようなことはあってはならないのです。
哲学者のハイデガーは、「世間話」「好奇心」「曖昧さ」の三つに特徴づけられる生き方こそ、世の人が抗うこともむなしく飲み込まれているものの正体なのだとして、それを「頽落(たいらく)」と呼びました(そのまま訳せば「没落」ないし「退廃」)。
その意味で、今週のかに座もまた、そこから完全に抜け出すことは難しく、どんどんその深みにはまりがちな「頽落」と自分との距離感を今一度確認していくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
かそけき環境こそ主役
今週のしし座は、改めて心を広くもつということを学んでいこうとするような星回り。
『河骨(こうほね)の花に添ひ浮くいもりかな』(高浜虚子)という句のごとし。いもりは人に疎まれはするけれど、花はその限りでなし。人間の側からすれば、どうしても人間こそがこの世界の好悪の鍵を握っているものだと考えがちになるのも仕方のないことですが、世界はそれだけで成立するほど狭苦しいものではないでしょう。
ほら、現に河骨の黄色い花はいもりの黒に寄り添って、目に鮮やかな美しいコントラストを形成してるじゃないか、と。
あなたもまた、どれだけ大多数の人間に嫌われていようとも、枠を取り去りさえすれば寄り添ってくれる相手がいるのだということに気が付いていけるはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
共同体の賦活を担う
今週のおとめ座は、形骸化した共同体に風穴を開けて賦活していこうとするような星回り。
古代文学を専門とする西郷信綱は、『神話と国家』に収録された「役小角考」において、山林への亡命者=修験者の存在こそ成人式の原型だった述べています。
役小角は山中の洞窟に居たとされますが、西郷はそれも比喩的には母の胎であり、隔離の生活を典型化したものであると解釈した上で、共同体が内部で硬直していくのを防ぐために不可欠な新陳代謝を促すための原理の象徴として役小角を捉えたのです。
あなたもまた、家庭であれ会社であれ、共同生活からの隔離や集団原理の否定としての孤独を改めて意識させられていきそうです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
変化の波をとらえる
今週のてんびん座は、やがて色が変わっていくだろう予感を噛みしめていくような星回り。
『黒南風や切傷に沁む運河べり』(秋元不死男)という句のごとし。梅雨前線が北上していく前後の天気を黒、荒、白と表す、先人の感覚には心憎いほどの的確さがあります。しかし、漁船をあやつる漁師たちにとってはこの微妙な天候の変化が死活問題となり、さらに掲句では生活だけでなく内面にも無視できない影響を及ぼしている訳です。
ここでいう「切傷」とは、新たな季節の到来を受けて浮かび上がってきた古い記憶であり、言わば「魂の裂け目」のようなものとも言えるかもしれません。それがうずく。うずくだけに留まらず、時化った海のごとく次第に勢いを増してこちら(陸=築き上げた現実)の安泰を脅かしてくる。
あなたもまた、破壊と再生への予感と覚悟に貫かれていきそうです。