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イケウチオーガニック"愛"を感じる広告が登場。ファンと企業をつなぐ想いとは

ライフスタイル

(仮)がついている意味

この「部活」は、コロナ禍で緊急事態宣言が出たときにも、Facebookやオンラインのファンミーティングを通して広がっていきました。

ところで、なぜ「IKEUCHI ORGANIC部(仮)」には(仮)がついているのでしょうか。

「最初に部活のネーミングをしてくれた人が(仮)とつけていたんですが、いつでも変わる余地があるという意味で、(仮)はつけたままにしようということになりました。僕たちは決して妄信的なファンというわけではないんです。言うときは言いますから(笑)」

モノ言う株主ならぬ「モノ言うファン」であることが(仮)の文字にはこめられているのだと森田さん。池内さんも「うちのお客さんはストレートに嫌なことは嫌と言うんです」と話します。

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工場に併設された今治ファクトリーストア。地下鉄の掲出期間を終えた応援広告が飾られている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

IKEUCHI ORGANICでは新製品ができると、顧客に向けて90分間の商品説明会を開いています。このため社内から新製品の提案があったときは、「この商品で90分間しゃべることができるか」というのも採用の基準のひとつだそう。

「『この色かわいいでしょ』だと90分なんてもたないですよね。『このメーカーのこの商品が売れているので』という提案だったら、『そこの社長を紹介するから転職したら。他にあるものはうちは絶対につくらんから』と言いますね」と池内さん。

そのように厳しく選び抜かれ、縫製の工程もクリアして試作品になった新製品でさえ、説明会で「お客さんの目が輝いていない」(池内さん)と、ボツになることもあるそうです。

森田さんが以前、気になってモノ申したのは「オーガニック140ライト」。通常のタオルは両面を糸がループ状になったパイル生地にすることでしっかり吸水しますが、これは乾きが速くなるよう裏面のパイルをカットしたバスタオルです。

「吸水力のイケウチがそれはないでしょう、と。もっと文句を言ってやろうと、とりあえず買ってみたんです。そうしたら、すぐに乾くうえに吸水力も担保されている。使っていくうちに2番目に好きなタオルになり、代表に謝りました」

「いつも『代表、これはちょっとないですわ』と言うとムッとした表情をされますが、発売されるときには僕たちの意見がきちんと反映されているんです。だから僕たちもきちんとお伝えしなければいけない責任を感じます。それに、最終的にはいいものにしてくれるだろうという信頼感もあるんです」

応援させてもらってありがとう

さかのぼれば、IKEUCHI ORGANICはファンに支えられてきた企業でした。

1999年に設立したオーガニックタオルの自社ブランド「IKT」が海外の展示会で受賞を果たし、知名度が上がってきた2003年、主要な取引先だった東京の問屋が自己破産。年商の7割を占めていた取引先を失ったうえ、売掛金の焦げ付きで約10億円もの負債を抱えました。

池内さんはそこで受託生産から自社ブランドへとかじを切る選択をし、追加融資を受けず、民事再生法の適用を申請したのです。決断できたのは、ファンの応援があったから。知らない間に「がんばれ池内タオル!」という個人サイトがつくられており、「あと何枚タオルを買えば存続できますか?」という応援メールが3桁に近いほど届きました。

池内さんは、ファンの存在についてこう語ります。

「ものづくりをする人間が独断的につくるものって、基本的に売れないんですよね。うちはかなり僕の独断でつくっていますし、今治タオルの中でもケタ違いに高い。それなのに買ってくれる人たちがいて、さらに『ありがとう』『買わせてもらいました』と感謝されたりもします」

「だから、この人たちが嫌な思いをすることは絶対にやってはいけない。うちのブランドの強みは、ファンの方たちがいることなんです」

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

70周年でファンが個人で寄付をして応援広告を出すことになったのは、企業と顧客の信頼関係が脈々と受け継がれてきたことも背景にはあったのでした。

さとなおさんことコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんも、応援広告の寄付に協力した一人。Facebookでこんなメッセージを寄せました。

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「毎朝毎昼毎晩、タオルを愛用し、気持ちいい思いをさせていただいています。アイドルやアーティストに対してだけでなく、企業やブランドに対しても『ファンは応援したい』のです。逆に、応援させてくれてありがとう、という気持ちです」

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