「夜、エアコンをつけっぱなしで寝たら、翌朝には声が出なかった」という人が多くいらっしゃいます。症状の出方として、声が出なくなったが熱も出ずに体は元気、という人もいれば、喉が痛くなり高熱が出た、という人も様々存在します。今回は、特に夏場においてエアコンによる喉の不調について、その特徴や予防方法、対処策などを中心に、医師が解説します。
エアコンによる喉の不調になりやすい人の特徴
就寝時にエアコンを使用して、そのまま翌朝までエアコンをつけっぱなしにしていて、朝起きると喉が痛くなっている原因で最も多いのが、エアコンの送風による空気の乾燥です。
冷房は空気中の水分までエアコン内部に吸い込まれるため、部屋は乾燥しやすく、乾燥した空気は、水分が非常に少ない状態であり、乾燥した空気を吸い込むと喉や気管が水分不足を起こして、喉に痛みが発生すると考えられています。
また、普段から口呼吸をしている人はエアコンの風で乾燥した空気をずっと口に受けるために、喉だけでなく、口の中が全体的に乾燥するため喉の痛みに繋がりやすいと考えられています。
さらに、口内が乾燥するとウイルスや細菌などの病原体が侵入しやすく、風邪を引いて喉が痛くなる場合もあります。
エアコンをつけっぱなしでも喉が痛くならない人の中には、主に鼻呼吸をしている場合も多く、口呼吸ではなく鼻でしっかり呼吸していれば鼻毛が病原体の侵入を防ぎ、喉が痛くなりにくく風邪も引きにくい状態となります。
エアコンをつけっぱなしにしていると、冷房病(別名:クーラー病)に陥る場合もあります。
冷房病とは、外気温と冷房の効いた部屋との温度差が原因となって、自律神経のバランスが乱れてのどの痛みや頭痛などの不快な症状に悩まされる病気です。
冷房病の症状には、他にも肩こりや手足のむくみ、疲労感や倦怠感など多彩にあり、人によっては発熱やめまいなどを引き起こす場合もあります。
さらに、エアコンを使用して喉が痛くなった場合、口の中の乾燥だけでなくエアコン内部に発生しているカビや真菌が原因となっているケースも想定されます。
冷房や除湿運転を長時間すると、エアコン内部は自然と湿気や結露で湿った状態になり、湿気が多い場所は、カビや雑菌が好むため繁殖しやすい環境であると考えられます。
エアコン内部にカビや雑菌が発生した状態で稼働させると、送り出された風とともにカビや雑菌の胞子が部屋中にまき散らされて汚れた空気を吸い込むことで、喉の粘膜に付着してのどの痛みなどの症状を引き起こすことがあります。
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エアコンによる喉の不調に対する予防方法
エアコンによる喉の不調を予防するために、日常的に加湿器などで部屋の乾燥を防ぐことをおすすめします。
湿度はおよそ40%を下回ると乾燥状態になると指摘されており、適正な湿度は50~60%と認識されていますので、エアコンを使用するときは同時に加湿器を併用して適正な環境を保ちましょう。
また、部屋に洗濯ものを干す、水の入ったコップを置くなどの方法で部屋の乾燥を防ぐことも可能です。
普段から口呼吸をする人は、エアコン使用時にも鼻呼吸を意識することで喉の痛みを防ぐことが期待できます。
特に、夜間など寝ているときに口呼吸の習慣を治すことは難しいため、口呼吸を防止するためのテープなどアイテムを上手に活用して鼻呼吸に切り替えることが効果的です。
また、エアコンをつけっぱなしにしていて、喉に痛みが出る原因の一つに、エアコン内部に発生したカビやホコリなどの汚れが考えられますので、そのような場合には、エアコン内部を定期的に掃除する対策を講じることが効果的です。
エアコンによる喉の不調に対する対処方法
万が一、エアコンによる喉の不調に陥った場合には、セルフケアとしてまずはぬるま湯やお茶、カモミールティーやミントティーなどの水分補給をしっかり行いましょう。
エアコンの風によって乾燥した空気を吸い込んだことが原因で喉の痛みが生じている際には、水分補給で痛みが改善する場合があります。
喉に痛みがある場合には、炭酸や辛い刺激物など喉の粘膜に悪影響を与える可能性がある飲食物は摂取を控えましょう。
また、喉の痛みが長期化している人は、早めにうがい薬やのどスプレーやトローチ、のど飴など適切な市販薬を服用して対処しましょう。
飲み薬では葛根湯や甘草湯、トラネキサム酸が配合されている市販薬がおすすめですし、ネギや生姜、大根やハチミツなどの殺菌作用のある食べ物を摂取するとのどの痛みを改善する効果が期待できます。
これらの生活ケアを行っても、症状が長引く際には喉の専門家である耳鼻咽喉科の専門医などに相談しましょう。
ひとつだけの方法を実践するよりも、複数の方法を同時に行ったほうがより早く効果的に働いて喉の痛み症状が軽快する可能性が高まりますので、自分でできることを前向きに取り組んでみてくださいね。