日本人は発酵性食物繊維が不足、白米好きが影響
近年、食の欧米化により日本人の食物繊維不足が深刻化しています。また、日本人は白米好きということも大きく影響しています。
「白米は、玄米を精製して食物繊維が多いぬかを取り除いたものなので、“糖質の塊”といえます。糖質は、胃や小腸で消化吸収され、血液をめぐるブドウ糖=血糖となります。ブドウ糖は、脳や筋肉、臓器を動かすエネルギーになりますが、摂りすぎると血糖値を上昇させるだけではなく、さらに中性脂肪となり脂肪細胞に蓄えられます。これが、糖質を摂りすぎると太る理由です」
戦後の食物繊維摂取量を調べた研究※2 によると、戦後10年となる1955年の食物繊維の摂取量は23g/日でした。しかし、食物繊維の摂取量は年々減り続け90年代以降は15g/日前後となり、摂取目標量(男性21g、女性18g)には及びません。特に、20代~30代の食物繊維摂取量が低いことが問題です。問題なのは、穀物から摂取する食物繊維の割合が減少していることです。1955年と2018年を比較するデータでは、割合が半分以下となっています。※2※3
※2)池上幸江「日本食物繊維研究会誌,1:3 12(1997)」※3)平成30年「国民健康・栄養調査」
穀物に含まれる「発酵性食物繊維=穀物繊維」が摂れる食材とは?
痩せ菌にきちんと働いてもらうポイントは、発酵性食物繊維です。穀物に含まれる発酵性食物繊維は、穀物繊維とも呼ばれていますが、代表的なものは「アラビノキシラン」と「βグルカン」です。アラビノキシランとβグルカンが豊富に含まれている食材は、小麦ブランシリアル、オートミール、もち麦、玄米などです。
もち麦も一種である大麦も痩せ菌を増やす効果がわかっている
国内の研究で大麦を摂取することによって、痩せ菌である「ブラウティア菌」が増加することがわかっています。※4大麦には「うるち性」と「もち性」の2種類がありますが、「もち性」の方が食物繊維量が多く、冷めてもモチっとした食感が特徴です。もち麦は、白米や玄米と混ぜてもおいしいですが、ゆでたもち麦ならサラダやスープのトッピングなどにも活用でき、いつもの食事に「ちょい足し」することで、手軽に腸内環境を整えることもできます。
※4)株式会社はくばくによるリリースを参照(https://www.hakubaku.co.jp/news/503/)
朝食に活躍する小麦ブランシリアル、ヨーグルトと相性抜群
ダイエットをしたい、腸内環境を整えたいけれど雑穀米や玄米を炊くのは面倒、時間がないという人にオススメなのは、小麦ブランシリアルです。小麦ブランシリアルには、発酵性食物繊維のアラビノキシランが豊富に含まれています。忙しい朝は、牛乳と混ぜるだけ、ヨーグルトにかけるだけで手軽に食べられます。
「最近の研究で、ブラウティア菌とビフィズス菌は相性がいいことがわかっています。ビフィズス菌が生み出す物質がブラウティア菌の大好物のようです。腸内細菌は分業制で、助け合って生きています。様々な種類の菌が活性化するようにバランスがとれた食事を摂ることが大切です」
ごはんにもなるオートミール
オートミールには、βグルカンという発酵性食物繊維が豊富に含まれています。近年、βグルカンの研究が進み、生活習慣病の改善、予防にも役立つことがわかりました。若年層ではごはん替わりにオートミールを利用することがブームになっていますが、忙しいミドル世代にもおススメです。カレーやチャーハン、おにぎりにオートミールをごはん替わりにすると相性抜群です。
「ブラウティア菌をはじめ、共生する菌を活性化するには菌のエサを与えることが何よりも大切です。炭水化物は糖と食物繊維でできていて、白米で摂取できるのは主に糖であることをお忘れなく」
小麦ブランシリアルやオートミールを活用して、痩せやすく太りにくい体質を健康的に手に入れましょう。
AdobeStock
教えてくれたのは…國澤 純 先生
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN(ニビオン))センター長(ヘルス・メディカル連携研究センター)。大阪大学薬学部卒業、大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、東京大学医科学研究所准教授、独立行政法人医薬基盤研究所プロジェクトリーダーを経て現職。