今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
狭い<私>を越えて
今週のかに座は、末永く見守っていきたいと思えるようなものに突き当たっていくような星回り。
『たんぽぽや長江濁るとこしなへ』(山口青邨)という句のごとし。
春になって、たんぽぽが咲いている。その前を、ゆっくりと長江が流れている。はるかな昔から、未来永劫変わることがないであろう長江の濁り。その流れは、人の一生や人が作りだす文明のスケールを超えた悠久の時間の流れをも思い起こさせる。
あなたもまた、意識の表層で近視眼的に凝り固まりがちなまなざしを、できるだけ遠く深くへと解き放っていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
未知への超越
今週のしし座は、ぶらぶら歩きの道すがら、未知のものの感触に自分を委ねていこうとするような星回り。
もはや「自己実現」という言葉は、あらゆる年代で当たり前のように使われるようになりましたが、一方で、自分というものから下りたい、特定の目的や役割と分かちがたく結びついてしまった自分を解除してしまいたいと思うこともあるのではないでしょうか。
あまり意味のあることばかりしたり、人生を堅固なものにしようとしていると、移ろいやすいもの、傷つきやすいもの、滅びやすいものが眼に入らなくなるという意味で、それしかできないというのは無能力の証しなのかも知れません。
あなたもまた、自分を閉じるのではなく開くことがテーマとなっているのだと言えます。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
関係の秘密
今週のおとめ座は、みずからの尊厳を守るため、一時的な協力関係を結んでいこうとするような星回り。
『菜の花は触れ合ひながら隠し合ふ』(宮﨑莉々香)という句のごとし。
多感な精神を持て余した少女たちがしばしば生きていることそれ自体に鋭い痛みを抱えてしまうように、おそらくは春の野を黄色に染める「菜の花」たちもまた、どこかに存在の哀しみを宿しており、それを互いに手を伸ばし合う中で、巧妙に隠しているのです。
あなたもまた、そんな菜の花たちにおのずと自分を重ねていくことになるかも知れません。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
詩人の仕事
今週のてんびん座は、夢を巧妙に隠しておくことは、もはや大人の節度などでないのだと、改めて自身に言い聞かせていこうとするような星回り。
「ぼくは20歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとは誰にも言わせまい。」これは20世紀フランス文学のなかでも最もよく引用されるであろう作品の1つである、ポール・ニザンの青春小説『アデン・アラビア』の冒頭の一節です。
「あの頃はよかった」という過去への虚飾や、まだ「大人」でない者に美しいイメージばかりを押しつけることで現在のみじめさを埋め合わせようという欺瞞(ぎまん)は、今後はますます成り立たなくなっていくはず。
あなたもまた、みずからの「青春」は他ならぬ今や今後にこそあるのだという感覚を、改めて深めていくことがテーマなのだと言えます。