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SANUが山岳地域に2週間で別荘を建てる理由。「鹿から見てかっこいい建築を目指す」

旅行・おでかけ

関東近郊の山や海にある別荘で暮らせる月額会員制サービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」。2024年夏以降、さらに厳しい自然条件の山岳地域に新しい建築モデルがオープンする予定です。都市に住む人たちが気軽に自然に親しむという軽やかなコンセプトの裏には、「自然と共生する建築」へのストイックな追求がありました。

「SANU 2nd Home」は、国内16拠点94室の別荘(セカンドホーム)を利用できる、月額5万5000円のサブスクリプションサービス。東京から車で2〜3時間ほどの場所で気軽に自然の中の暮らしを体験できるとして人気を呼び、毎月の会員枠はすぐに埋まる状況です。

SANU 2nd Home

「都市と自然を行き来するライフスタイルをスタンダードにしたい」と、CEOの福島弦さん。共同創業者でブランドディレクターの本間貴裕さんも、「自然の中の暮らしを知り、好きになることで、自然を守ろうとする気持ちが生まれます」と、セカンドホームの意義を説明します。

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月額会員制のセカンドホームの新建築モデル「SANU CABIN MOSS」
写真提供:SANU

自然の過酷さと共生する

自然は人間に癒しを与える一方、厳しく過酷な環境そのもの。SANUでは、人間の快適さや安全性だけでなく自然環境への配慮を、セカンドホーム建築の重要な要素にしているといいます。

「これまでの建築は、自然災害からどう人間を守るか、厳しい環境でも快適に暮らせるか、金額を抑えられるかなど、人間の視点で考えられてきました。でも、鹿の視点で見てかっこいい建築ってどんなものでしょう。なぜならこの建築を見るのは人間よりも、鹿や虫や鳥や微生物のほうが圧倒的に多いはずだから。僕らはお邪魔している身なんです」(本間さん)

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テラスと屋内のつながりを意識して設計されている
写真提供:SANU

そこでSANUは、2021年に発表した「SANU CABIN BEE」の開発パートナーである建築チーム「ADX」とともに、新建築モデルの「SANU CABIN MOSS」を開発。過酷な自然と共生することを目指し、豪雪地帯など厳しい自然条件を想定して設計したといいます。

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自然への負荷を軽減する建築方法について説明するADX CEOの安齋好太郎さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

ADX CEOの安齋好太郎さんは、福島県二本松市で木造建築ひとすじの安斎建設工業の3代目。

「僕は登山がライフワークで、深呼吸したくなるような森がとにかく好きなので、森と人が共生する建築を追求してきました。祖父、父、自分と3代にわたって木造建築に取り組む中で、木材資源、土壌、職人などの課題は積み上がっています。新建築モデルの設計は、それらの課題に挑戦する意味もありました」

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新建築モデル「SANU CABIN MOSS」の模型。高床式で風が通りやすく、多面体の屋根により雨水や雪は分散されて地上に落ちるつくり
Akiko Kobayashi / OTEMOTO(左)

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写真提供:SANU(右)

現場の工期は2週間

新建築モデル「SANU CABIN MOSS」は、従来の「SANU CABIN BEE」より杭を細くし、本数を増やすことで、土壌への負荷を軽減。多面体のような屋根は降った雨や雪を分散させて地上に落とすので、4メートルの積雪でも耐えうるつくりになっています。国内で需要が減っている銘木などの国産材を100%使っています。

MOSSは2024年夏以降、北軽井沢(長野県)をはじめ、南アルプス(山梨県)、ニセコ(北海道)など7つの地域に建設が予定されています。いずれも天候が不安定だったり、積雪が多かったりする山間部。インフラが整っていない地域もあります。

「自然の中で建設工事をしようとすると、冬場はマイナス気温のもと雪かきをして現場に行くこともあり、自然にも人間にも負荷がかかります。現地での作業時間を減らすことで、環境に配慮するとともに、現場で働く人の安全確保につながり、建設業の人手不足にも対応できます」(安齋さん)

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写真提供:SANU

このためMOSSは、屋根のある工場でつくったユニットを現地で組み立てる「プレハブ工法」となっています。竣工までの工期2カ月半のうち、現場の工期はわずか2週間。ユニットは脱着可能な金物で組み立てるため、経年劣化したユニットだけを取り替えることもできます。

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機能ごとのユニットが取り外せることを説明するSANU CEOの福島弦さん
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

SANUは2025年までに全国30拠点200室に拡大し、淡路島や奄美大島でもオープンを予定しています。

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