今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
瓦礫の中にいるからこそ
今週のかに座は、ひとりの血の通った人間としてみずからの素直な心情を顕わにしていこうとするような星回り。
『似しひとに心さわぎぬ秋深し』(長谷川ふみ子)という句のごとし。
掲句は戦争中に詠まれたもので、作者の夫は兵役で海を隔てた遠い戦地に行っており、いま帰ってきている訳がないどころか、もう二度と会うこともできない可能性だってありました。そんなもしもの不吉な事態など考えたくもなかったはずですが、それでも秋は深くなり、深くなる秋は身に沁みて遠き人を思わせるのです。
あなたもまた、血であれ涙であれ言葉であれ変に抑え込まず、自然とあふれだす心に任せていくべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
懐かしくて新しいもの
今週のしし座は、新しい構想のもとで呪術的なパワーを発揮していこうとするような星回り。
中世の遊芸民の残像が色濃く投影された近世の「役者」たちは、もっぱら「悪所」と呼ばれた芝居町を活動の場としていました。
「悪所」は、各地から反権力・反秩序的な何ものかが流れ込んでくる「カオスの場」であり、そこに出入りする民衆の愛顧にこたえるべく、役者たちもまた、ゆれうごく浮世を活写し、武家社会における勧善懲悪主義的な想像力を突き破って新しい時代の流れを、舞台上で視覚化していかねばならかったのです。
あなたもまた、自分を支持し愛顧してくれる人達が心の底から感じている新しい時代の流れを本能的に嗅ぎ取っていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
落葉を踏む
今週のおとめ座は、聞こえないはずの声を聞き、口をついて出がちな言葉を飲み込んでいくような星回り。
『落葉道二度聞き取れずもう聞かず』(藤井あかり)という句のごとし。
落葉を踏んだらどんな音がするのか、たとえ直近の記憶がなくても僕らがなんとなく頭の中でその音を再生できるように、作中の「私」もまた相手がこのタイミングでどんな言葉を口をにするのかが、なんとなく聞こえてしまったのかもしれません。
あなたもまた、口にするべき言葉と飲み込むべき言葉の取捨選択ということが1つのテーマとなっていくでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
よく選ばれた夜の世界
今週のてんびん座は、精神の根をゆっくりと良質な孤独の深みへと下ろしていこうとするような星回り。
20世紀に生きた思想家ガストン・バシュラールは「ラジオ」的なるものこそ、その大役にふさわしいとして、「ラジオは聴取者に絶対的な休息の印象、根を下ろした休息の印象を与える」と述べています。
「ラジオは、不幸な魂、暗鬱な魂たちに夜には告げてやらねばならぬ、「問題はもうこの地上にかかずらいながら眠ったりはしないこと、きみが選ぼうとしている夜の世界に戻ってゆくことなのだよ」と。」
あなたもまた、ラジオ的な時間の流れがもたらしてくれる孤独な良夜を、自分のまわりに構成し直してみるといいでしょう。