カフェやギャラリー、アパレルショップの旗艦店などが立ち並ぶ代官山。ゆったりとした落ち着いた空気が流れる、休日の散策にぴったりのエリアです。今回は、そんな代官山に点在する名建築を、歴史や建築の意匠を紐解きながらご紹介。今までは何気なく前を通っていた建築物にも、新たな気づきがあるかもしれません。
1.フォレストゲート代官山 MAIN棟(隈研吾建築都市設計事務所)
早速、駅に近いところから順番に巡っていきましょう。まずは、2023年10月、代官山駅中央口の目の前にオープンした複合商業施設「フォレストゲート代官山」。こちらは賃貸住宅とシェアオフィス、飲食店やアパレルなどのテナントを擁したMAIN棟です。デザイン・設計は、言わずと知れた世界的建築家・隈研吾氏。
住宅エリアのコンセプトは「代官山の森の木箱に棲む」。木箱を積み重ねたような外観は、人と人とのゆるやかな繋がりや代官山という街の持つ温かさを表しています。木のように見える箇所の素材は、実はアルミニウム。木の温かみと、メンテナンスのしやすさを両立した建築です。
棟内の広々とした吹き抜けには自然光がたっぷり入り、開放感を演出。“フォレストゲート”という名前の通り、敷地内には緑が生い茂り、都心の真ん中でまるで森に囲まれているような空間を作り出しています。
Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)MAIN棟
住所:東京都渋谷区代官山町20番23号
営業時間・定休日:各店による
2.フォレストゲート代官山 TENOHA棟(SUEP.)
MAIN棟の隣には、木造二階建てのTENOHA棟が並びます。設計は末光弘和氏と末光陽子氏による建築家ユニット「SUEP.(スープ)」によるものです。「循環する建築」をテーマに、木材をアルミの部品で接続し、解体や移築、再利用ができる仕組みになっています。フォレストゲート代官山を運営する東急不動産が保全活動を行う、岡山県西粟倉村の森林の間伐材を構造材として活用するなど、屋内外にサステナブルな資源を取り入れていることも特徴です。
1階にある、サステナブルな生活体験ができるカフェ「CIRTY CAFE」は、ワークショップやポップアップストアなどにも幅広く活用されています。屋上に広がる農園ではハーブなどを栽培し、収穫したものはカフェで提供。地産地消ならぬ「店産店消」を目指しています。
TENOHA棟で過ごしていると、棟内のインテリアや外壁など、各所に正六角形のモチーフが見られることに気づきます。正六角形は、蜂の巣のハニカム構造など自然界にも存在する形。安定感があり、化学記号の展開図にも似た、ここからネットワークが広がっていくイメージを想起させるモチーフとして採用したそうです。
Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)TENOHA棟
住所:東京都渋谷区代官山町20番12号
営業時間・定休日:各店による
3.ヒルサイドテラス(槇文彦 槇総合計画事務所)
続いてご紹介するのは、代官山の象徴ともいえる複合施設「ヒルサイドテラス」。幕張メッセや東京体育館、表参道のSPIRALなども手がけた世界的な建築家、槇文彦氏の代表作です。住居・店舗・オフィスの役割を持ち、1967年から1992年まで数期に分けて、13棟の建物が段階的に建設されてきました。
もとは緑の生い茂った傾斜地でしたが、この土地を所有していた朝倉不動産は、この土地が長期的に快適な場所であり続けるために、周囲の変化に徐々に適合させていくことを望んだそう。30年をかけて醸成された「ヒルサイドテラス」には、今ではカフェやレストランなどの飲食店からインテリア・雑貨店、ヘアサロンまで幅広いジャンルのテナントが入店していて、人々がショッピングを楽しんでいます。
グレーのタイルやアルミ材を基調とした、モダンでスタイリッシュな外観。敷地内は緑が豊かで、建物と街を自然と繋ぎます。これといった入り口を設けず、門や塀などもないので、人々の足を自然と敷地内へ導くような設計です。
1973年の第二期に建てられたC棟の広場には、白と赤のタイルが敷き詰められています。建物を真上から見るとぽっかりと四角い穴が空いたような形で、吹き抜けのような開放感をもたらします。
こちらは1992年の第六期に建てられたF棟の内観。階段や通路、スロープが複雑に連なった起伏のある形状はこのF棟だけでなく、ほかの棟にも見られます。ヒルサイドテラスが建つ前の、もともとの地形からインスピレーションを受けているそうで、来訪者を奥へ奥へと誘い込みます。
ヒルサイドテラス
住所:東京都渋谷区猿楽町18-8
営業時間・定休日:各店による