今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
悪夢からさめるために
今週のかに座は、暴力と戦争の原因となっているものをリアルタイムに見出していこうとするような星回り。
なぜ私たちは、すすんで自由を放棄し、悪に身をゆだねてしまうのか?この命題を読み解く鍵として、フロムはナルシシズムを挙げています(『悪について』)。
とはいえ、限度を超えない範囲内での良性の個人的なナルシシズムまで批判している訳ではなく、むしろ必要かつ「有用な」性向であると述べており、問題なのは個人的ナルシシズムより認識するのが容易でない集団的ナルシシズムなのだと言います。
あなたもまた、自分自身や隣人たちの内にうごめく「復讐したい」という感情が空虚な妄想の産物にすぎないか否か、いったん立ち止まって考えてみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
もっと直接的な共鳴を
今週のしし座は、どこか懐かしくも新しく感じられる会話に興じていくような星回り。
『雪だるま星のおしゃべりぺちゃくちゃと』(松本たかし)という句のごとし。
空気の澄んだ冬の夜空で輝く星たちがギラッギラッとまたたいているさまを見ていると、まるで星と星とがおしゃべりしているように感じられてきますが、掲句ではそれを「ぺちゃくちゃ」とまるで昼の子供たちに寄せて表しています。
あなたもまた、惰性で交わしている自動返信メールのようなやり取りから一歩踏み出て、自分でもその意味をつかみかねるような言葉を交わしていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
人生の素顔をみて
今週のおとめ座は、いつの間にか取り込まれていた余計な文脈やしがらみをそぎ落とし、そこから離脱していこうとするような星回り。
ミシェル・ビュトールの『時間割』の主人公ルヴェルは、一年間の長期出張でイギリスのブレストンという都市にやってきたのですが、次第に「脂じみた埃の巨大な沼」と描写されるこの迷宮のような街に飲み込まれていき、自分を見失いかけてしまいます。
「ぼく」は日記を書き続け、それが本書となって読者はそれを後追い読んでいくという構成になっている訳ですが、ここで日記は地獄からぬけ出していくためにすがる「蜘蛛の糸」のような役割を果たしていくのです。
あなたもまた、小説内の「ぼく」のように「語り」を通して自分を再構成していくようなところが少なからず出てくるはず。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
些末の味わい
今週のてんびん座は、心憎い「才能の無駄遣い」にこそ励んでいこうとするような星回り。
『「ちょうど良い木の棒」と思う冬の棒』(長嶋有)という句のごとし。道で「ちょうど良い木の棒」を拾って持ち帰ってみたものの、結局なんの使い道もなく放置している内に存在ごと忘れてしまい、数か月後に同居人に一喝されるか、黙ってゴミとして捨てられているというのはよくある話ではありますが、それをこんな何気ない一句に仕立ててしまう作者の手腕には思わず嫉妬さえ感じてしまいます。
この句は畳みかけるような「無駄」のかけ算の所産である訳ですが、しかしこうした俳味にあふれた遊び心こそ現代人が失ってしまったものなのではないでしょうか。
あなたもまた、たとえツッコミがそばに控えていなくとも積極的にボケをかましていきたいところです。