今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
「たたずむ」ことの詩学
今週のかに座は、最も日常的で見過ごされがちな時間や空間の中に、人生の深度を回復する回路を見出していこうとするような星回り。
『夕顔に水仕もすみてたたずめり』(杉田久女)という句のごとし。
この句が詠まれた昭和初期は、圧倒的多数の女性は依然として「家」に縛りつけられ、家事や育児を中心とした生活を余儀なくされていました。そうした生活の中で、作者のような女性俳人が、「美」と「詩情」とを何でもないような日常のなかに再発見しようとした姿勢は、当時としても非常に先鋭的でした。
あなたもまた、存在の揺らぎに耳を澄ます行為としての「たたずむ」を大事にしていきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
健康第一
今週のしし座は、常識的な分別を無視していくような「無分別」を知性にセットし直していこうとするような星回り。
大数学者の岡潔と小林秀雄の60年代の対談を収録した『人間の建設』でも、普通は学問の世界では軽視されがちな「直観」ということの大切さについて取り上げられていましたが、宗教学者の中沢新一は『レンマ学』(2019)の中で、およそ二人が「直観」について語りあっていたような内容を明確に「レンマ的知性」と定義してみせました。
レンマ的知性とは「中枢神経系で行われている情報処理のやり方とは原理的に相容れない」、「より根源的なもうひとつの理性能力」なのだと。
あなたもまた、そんな粘菌と同様、いちいち頭で考えて決めるのではなく、体全体で受け取った情報から導きだした直観にこそ従っていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
をさなき人、をさなき心
今週のおとめ座は、自分以上にピュアな存在に対して深い敬意を払っていこうとするような星回り。
『をさなくて昼寝の国の人となる』(田中裕明)という句のごとし。
「昼寝の国」という表現から、作者がそれを単なる睡眠ではなく、現実の時空から切り離された「別世界への一時的な旅」のようなものとして捉えていることが分かるはず。まるで『不思議の国のアリス』のように、急な眠りによってだけ行ける国というのがあるのかも知れません。
あなたもまた、ただ自分が昼寝を「する」のではなく、傍らにある「昼寝の国の人」の神秘をこそ、そっと受け止めていきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
応答と受苦
今週のてんびん座は、無視できない呼びかけに応答するための方策を改めて見出していこうとするような星回り。
雑誌の表紙や朝のニュース番組、お気に入りのYoutuber、駅構内や電車内のポスターなど、現代社会の日常はさまざまな「顔」で充ちている一方で、ひと昔前に比べると“顔という現象”そのものはひどくうすっぺらいものになってきたように思います。
哲学者のエマニュエル・レヴィナスは、私たちの中には「慎み深い露出」を行っている者もごくわかずに存在するが、顔というのはもっとも<貧しい>ものであり、本質的な欠乏があるのだと言います。
あなたもまた、誰かの顔に応答するなかで、自身の顔つきもまた変わってくるという変化やその兆しを敏感に感じ取っていきたいところです。