今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
体中の目を開いていく
今週のかに座は、他人の言葉よりもみずからの経験から教えを引き出していこうとするような星回り。
進化が著しい人工知能との比較を通して、いま人間のもつ想起的な記憶(思い出)の重要性に対する再評価の流れがきていますが、ここで数百年の時をこえてぜひ思い出していきたい人物のひとりにレオナルド・ダ・ヴィンチがいます。
彼は「絵画は科学(知)なり」というモットーでも知られていますが、「魂の窓と呼ばれる眼は(…)限りない自然の作品を考察しうる第一義的な道だから」とも言っていて、彼がきちんと眼で観察することを「上等な思い出」の想起の上で何よりも大切にしていたことが分かります。
あなたもまた、改めて微細な観察の目を凝らし「思い出」の質を高めていく習慣をつけていきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
不動者の佇まい
今週のしし座は、流れの中にいながらも動かず、かえって世界を動かすような存在感を放っていくような星回り。
『冷されて牛の貫禄しづかなり』(秋元不死男)という句のごとし。
目の前の牛は人間に繋がれた家畜ではなくなって、川の流れや大地の息吹さえも小さなことのように受け止め、森羅万象を従える王者のように、動かぬことで世界の中心に君臨している“何か”となった。そこには「耐える」でも「楽しむ」でもない、もっと大きな肯定の態度があり、その構えが「貫禄」という言葉で表現されているのです。
あなたもまた、人間界のあわただしさを悠然と見下ろす牛の哲学に耳を傾けていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
川を渡る
今週のおとめ座は、無条件でこれまでの自分自身やその一部を放棄していこうとするような星回り。
作家の夏樹静子が、自身の腰痛体験をまとめた『腰痛放浪記 椅子がこわい』という本があります。ある日ベッドで目覚めた直後に耐えられないほどの激痛に襲われた著者は、あらゆる手を打ったものの一向に症状がおさまらなかったのだそう。
言葉で書けば「心身症」の一言で終わってしまう話なのですが、物理的な痛みが自分の作り出したものに過ぎなかったという体験は、実際のところいまだに著者自身でさえ信じられないものであるはず。
あなたもまた、なんらかの仕方で古びれてすっかり硬直してしまった自分と決別していくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
謎の最中にあるという感覚
今週のてんびん座は、ささやかな巡り合わせの妙によって精神が透明になっていくような星回り。
『炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島』(森澄雄)という句のごとし。照りつける太陽に圧倒されるような日に、虚無感が支配する昼下がりの無人駅へ、ひとりの僧が乗り込んでくるという偶然が、まるで仏典の余白に書き添えられたエピソードのように不思議と心に残った。
そして気付くのです。どんな炎天であれ、どんな辺鄙な駅であれ、時としてひとりの人間との出会いや、その涼やかな在り方ひとつで、世界はサーっと変わってしまうのだということに。
あなたもまた、おのずと自分なりの「岐阜羽島」体験の最中に立たされていくことになるかも知れません。