今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
かすかな無理をやめてみる
今週のかに座は、心を蝕んでくる根源的な不安に対する「抗体」を作っていこうとするような星回り。
かつて作家の五木寛之は『「見えない不安」に「心の抗体」を』というエッセイの中で、コロナが世界中で猛威をふるっていた最中に、知らず知らずのうちに人々の心が蝕まれていることを指摘し、そんな時こそ精神に「心の抗体」をもつ必要があるのだと訴えていました。
五木は、すべてを想定内に置こうとする文明の光が届かず、こちらの意図がすべからく無に帰するような絶対的な「夜」の闇に逆らわず、まずそれをきちんと受け入れた上で、日々精神と肉体の歩調を合わせていくことこそが大事なのだと説いているわけですが、これはリーダーないし英雄不在で混迷を極めている現在の日本社会を生き延びるのにふさわしい態度でもあるのではないでしょうか。
あなたもまた、人間の意図をはるかに超えた自然と他ならぬ自分自身とが地続きであることを感じながら、その通り道を歩いていきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自己否定において自己を有つ
今週のしし座は、象徴としての恋から実存としての恋へのとば口に立っていくような星回り。
『髪白くなるうつそみや星の恋』(藺草慶子)という句のごとし。
歳を重ねてなお続く恋情や愛情の静かな灯火が宿った「髪白くなる」という詠い出しや、この世にあることの儚さへの実感を含んだ「うつそみや」という詠嘆には、死に向かいつつある存在であることの自覚と、それでもなお生きて誰かを想うことをやめられない慈しみとが、おそらく作者なりの形で共鳴しつつ寄り添いあっているのでしょう。
あなたもまた、年老いてもなお愛することの意味が、誰か何かにそっと肯定されていくのを実感していくことができるはず。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ちょうどいい「中間」を求めて
今週のおとめ座は、時と場所を自分で選び、みずからの手で狼煙を上げていこうとするような星回り。
制作のはじめにするべきことについて、俳人の小澤實と宗教学者の中沢新一は『俳句の海に潜る』という対談本の中で、日本の庭づくりを取り上げて語っています。
素材であれ場所であれ、タイミングであれ相手であれ、他とは明らかに異なる、「ここしかない!」という特異点を見つけていくこと。そしてそこから、自分なりの文化や芸術をもう一度新たに始めていくこと。
あなたもまた、古来から文化を担ってきた人たちがそうしてきたように、より純粋かつ極私的な領域で、誰にも邪魔されず、そっと日記や儀式、作品に自分なりの息吹を吹き込んでいきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
薄膜の奥へ
今週のてんびん座は、言葉が浮遊していくのではなく、解釈の足場そのものが浮遊していくような星回り。
『南から骨のひらいた傘が来る』(鴇田智哉)という句のごとし。
一読して、誰もが思い浮かべるであろう「南洋で戦死した死者たちが盆に還ってきたことを暗示しているのではないか」という素朴な解釈を、その奇妙な比喩性と詩的な浮遊感によってじわじわと浸食しては裏切っていくような不思議な言葉の力を感じさせてくれる句。
あなたもまた、最後まで「何だったのか」を明言できないような、語られぬ喪失の残響のようなものをどこかで感じていくことになるでしょう。