「そうやってオレを振り回して楽しい?」。彼に言われてはじめて、自分の身勝手さに気づいた、というそこのあなた。自分勝手さは、無自覚なものなのかもしれませんね。でもその気づきは、自分を変えるチャンス。失ってはじめて彼の大切さに気づいた……なんてことにならないよう、女性が恋愛でやりがちな身勝手な言動から卒業するための方法を、作家の内藤みかさんと一緒に考えていきましょう。
内藤みか(作家・イケメン評論家)
自分勝手と言われないために。彼の気持ちを思いやるって、どんなふうに?
「自分勝手」だと彼から言われてしまったという人は、実はわりといます。仕事で忙しい彼に対して無理やりデートを持ちかけたり、LINEの返信をねだったりするときなどに、そう言われることがあるようです。
彼の気持ちや立場を思いやるには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?
「あなたのためにと思って」は、本当に彼のため?
アラサーのRさんは彼氏と同じ会社で勤務していました。3歳年下の彼はRさんからみると部下という立場。交際は順調でしたが、ある日、彼が転勤することになります。といっても電車で1時間ほどの距離なので、遠距離交際というほどではありませんが、今までのように会社帰りに待ち合わせてデートするというようなことをできなくなるので、Rさんはかなりさみしく思っていました。
「新しい職場でも彼とつながっていたい」という思いから、Rさんは彼に有名ブランドの名刺入れをプレゼントしました。彼が青、Rさんがピンクのラインが入ったものを選び、おそろいで持っていたいと考えたからです。
けれどRさんの願いもむなしく、彼は新しい配属された環境が忙しく、休日も出勤することがあり、週末デートもままならなくなってしまいました。それどころかLINEも既読スルーになりがちで、なかなか返信が来なくなってしまったのです。
ある日、とうとう未読のままメッセージが深夜になっても読まれないことがあり、ついにRさんは不安を爆発させてしまいました。彼に「忙しくても毎日1回は返信してほしい」とメッセージしたのです。すぐに彼も「わかった」とだけ返信してきましたが「たったそれだけ!?」とRさんはがっかりし、自分をかまってくれない彼を責めるLINEを送りつけました。すると彼から、「こちらの忙しさも知らないで、自分勝手だ」と言われてしまったのです。
「私の気持ちもわかってほしい」は逆効果
彼から自分勝手だと指摘され、その場は「ごめんね、ちょっとイライラしてた」とすぐに謝ったRさんですが、心の中では不満でいっぱいでした。
彼が新しい職場に慣れるために一生懸命なのはわかります。けれどそのために恋人の自分をほったらかしてしまうのは、少し誠意がないと感じたのです。彼が職場にいなくなり、どれだけ自分がさみしいと思っているのか、彼はそのことに気づかないのだろうか。悲しくなったRさんは翌日、「私の気持ちもわかってほしい」とだけ、再度メッセージを送りました。
すると彼から夜に返信がきたのですが、Rさんはそれを読んでがくぜんとしました。「僕の気持ちもわかってほしい」とだけ書かれていたからです。
おそろいの名刺入れを持って、離れていてもお互いのことを忘れないようにと望んでいたにも関わらず、彼の気持ちはどんどん離れていってしまったのでしょうか。冷たい彼の態度に、もうダメなのかもしれない、とRさんは深く落ち込んでしまったのです。
彼に何を求めているのかを考えてみましょう
Rさんは彼になぜ「自分勝手」と言われてしまったのでしょうか。
それはRさんの望みを、忙しい彼にかなえてもらおうとしたからなのです。新しい環境でがんばる彼は、今が大切な時期だということは、同じ会社に勤めるRさんならある程度は理解できるはず。それなのにRさんは今まで通りの交際の熱量を、彼に求めてしまったのです。距離が離れてしまうのだから、その分をメッセージや通話の量でおぎなってほしかったのです。
けれど彼目線で考えれば、あらたに覚えなくてはならないことが多く、自宅でも作業することがある多忙な状況のなかで、今までのようにRさんとやりとりはできません。それなのにRさんはそんな状況の彼をいたわるどころか、「毎日返信をして」と彼に要求してしまったうえに、「さみしい」などと彼女の気持ちを押しつけてきたのです。
こうやって彼の立場で想像すれば、Rさんが彼に「自分勝手だ」と言われてしまったのも、わかる気がします。
彼は仕事で忙しかっただけなのに……
Rさんは「私はこんなにさみしいのに、あなたはさみしくないの?」と彼に訴え続けていました。けれど彼はさみしいなどと感じる余裕もないほどに仕事で大変だったのです。
転勤したてのときは、歓迎会などで忙しく、恋人にかまうことが一時的にむずかしくなることもあります。連絡がとだえがちになっても「仕事が大変なのね」と解釈し、不安がって騒ぎ立てないことが、年上の恋人としてふさわしい対応だったのではないでしょうか。
彼が連絡をしてこないと、「ほかにいい女性ができたのではないだろうか」と不安になる女性は少なくありません。けれど、実際は本当に仕事が大変だっただけ、ということがよくあります。
今回の彼も明らかに仕事でいっぱいいっぱいだったのでしょう。男性は不器用で、同時に2つのことをこなせないことがあります。恋愛と仕事のバランスがうまく取れず、恋人を待たせてしまう人もいます。そんなときに「さみしいから私にかまって!」と訴える女性と、「待ってるからお仕事がんばってね」と言う女性では、どちらが自分勝手でしょうか。
自分を甘やかさないことで良好な関係に
状況を見てみると、Rさんより彼のほうがずっと大変そうです。Rさんは今までどおりの職場からぽっかりと彼だけが消えたので、とてもさみしいのでしょう。けれど彼女は職場が変わったわけではないので、今までと変わらずに仕事をこなしているはずです。
しかし彼は、Rさんに会えないさみしさに加え、今までとちがう環境になり、新しい仕事、新しい職場の人間関係などにも対応しなくてはなりません。相当過酷な環境にいる彼に対して、「もっと私にかまって」というのは、かなりのワガママなのかもしれないのです。
しかしRさんが「私はこんなにさみしいのに」と考えているのと同じように、彼は「僕はこんなに忙しいのに」と考えているのであれば、両者はいつまでたっても和解できません。彼にRさんのさみしさに配慮する余裕がないのであれば、Rさんのほうから彼の忙しさに気を配る必要があるのです。彼は永遠にRさんを放置しているつもりではないはず。仕事が落ちついたら、会える時間やメッセージをやりとりする時間は少しずつ増えていくはずです。