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生理前のイライラ、どう対処する?

ライフスタイル

生理前になると「イライラする」「怒りっぽくなる」「やる気が起きない」など、精神的に不安定になることはありませんか? その結果、仕事でミスをしてしまったり、周囲の人と衝突してしまったりすると、余計に落ち込んでしまいますよね。今回は、「生理前のイライラ」がどうして起こるのか、また有効な対処法について、産婦人科医の高尾美穂先生に聞きました。

及川夕子

楽になれる方法を見つけ、つらいときには婦人科へ

――症状にもよりますが、生理前にイライラしそうと思ったら、リラックスして過ごしたり、予定を入れすぎないようにしたりするなど、工夫することで気持ちを落ち着かせることはできそうですね。

高尾先生:そうですね。多少の不調は誰にでも見られるものなので、一時的なことと受け止めて上手に過ごしている人も多いと思います。調子のいいときに、仕事場やまわりの人に「生理前は、イライラしてしまうことがあるの」と、伝えて理解を求めるのもひとつの方法ですね。

でも、中には、気持ちのコントロールがきかなくなって、仕事や人間関係に支障が出てしまう人もいますよね。そんな場合には、婦人科に相談してみましょう。治療で症状を緩和することができます。

――PMSの治療法にはどのようなものがあるのですか?

高尾先生:ひとつ目のチョイスは漢方療法です。漢方療法は、個人の証(症状や体質)に合わせて、漢方薬を使用することで体調を整えていくというような治療法になります。PMSの治療では、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯、 女神散、抑肝散などがよく用いられます。効果は個人差があり、効き目もゆっくりとしたものになります。

2つ目のチョイスは低用量ピル。ホルモン値を安定させることで、PMSの症状を緩和します。服用すると、PMSの症状が3カ月以内によくなるというデータ [*1] があります。

――低用量ピルは避妊薬として以外に、月経困難症(生理が重い)や子宮内膜症の治療にも使われますね。PMSに対してはどのように作用するのですか?

高尾先生:低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンが少量含まれていて、これを服用すると、体はエストロゲンがすでに体内にあると錯覚するんですね。その結果、排卵は起こらず、プロゲステロンの急激な増減も起こらなくなるという仕組みです。本来なら、生理周期ごとに女性ホルモンのダイナミックな変化があるわけですが、その変化をなくすことで、「生理前の変化=PMS症状」を起こさないようにコントロールできるというわけです。

[*1]Takeda T et al., J Obstet Gynaecol Res. 2015 Oct;41(10):1584-90.

QOLを高くして生きることが自分を守ることに

高尾先生:みなさんに知ってほしいのは、今の時代、調子が悪いことをわかっていながらやり過ごす時代ではないよね、我慢は美徳ではないよねということ。QOL(生活の質)を高く保って生活することは、自分の体や生き方を大事にすることでもあると思うんです。働く女性は、仕事のパフォーマンスを維持することも重要ですよね。低用量ピルなどを上手に活用して、不調を積極的にケアしていこうというふうに、合理的な考え方を持つ女性が増えるといいなと思います。

もちろん、薬というものは当然副作用があったり、効果も個人差があったりするものですが、医師と相談しながら用法・用量を守って正しく使えば過度に心配しすぎる必要はありません。

また、治療がうまくいくかどうかは、その人の向き合い方でも変わってくるもの。自分でそうしたいと思って納得して薬を使うのと、勧められて嫌々やるのとでは、治療効果や継続率がちがってきたりします。だからこそ自分はどうしたいのかを大事にして、自分の体や心と向き合って自分で決めることが大切ですよ。

ちなみに低用量ピルは、月経困難症(生理が重い)や子宮内膜症の場合には、保険適用となります。自費の場合でも、ひと月3,000~4,000円くらい(東京での相場) で処方してもらえます。困ったら婦人科に相談してみてください。

――「このイライラはPMSかな?」と思ったときに、どう解決していくか。困り具合をいちばんよく知っているのは、自分自身だということ。毎日を快適に過ごすためにも、正しい知識を得て、心と体のケアをしていくことが大事ですね。高尾先生、ありがとうございました。

生理前のイライラはPMSの可能性がある。対策は?

(取材・文:及川夕子、監修:高尾美穂先生、イラスト:クー)

※画像はイメージです

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