次のデートに誘われなかった、フェードアウトされた……。そんな女性たちの「デートの失敗談」をラブホの上野さんが分析する連載です。このデートのどこがダメだったのかを、紳士的かつ論理的に解説します。
今回の失敗デート
会社の先輩と何度か2人きりのデートを重ねています。だけど先日のデートで「下の名前で呼んでいいよ」と言われ、緊張して呼べず、結局いつも通り「苗字+さん」で呼び続けています。この一件があってから、先輩が少しよそよそしくなったような気もします。
呼び方を変えるタイミングって、いつがベストなのでしょうか。また、緊張して呼べない場合、自分なりの呼び方でいいのでしょうか。お互いの距離が縮まる呼び方もあれば教えてください。欲張りですみません……。
ご質問誠に有難う御座います。
ロシアでは、相手との関係性によって名前の呼び方がかなり厳格に決まっております。
というわけで誰も知っているロシア人。KGB(ソ連保安委員会)出身にしてロシア連邦第4代大統領のウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチンを例にして解説させていただきましょう。
日本では一般的に「プーチン大統領」と呼ばれておりますが、ロシアではプーチン大統領のことをプーチンと呼ぶことはまずありません。
まずもっとも格式張った呼び方をする場合、ウラジーミル・ウラジーミロヴィチと呼びます。
公式の場や目上の方を呼ぶときに使う方法と考えていただければ問題ありません。
次に友人関係などの場合は、最初のウラジーミルを砕けた言い方にして「ヴァロージャ」と呼びます。
『ムダヅモ無き改革』という漫画ではウクライナ大統領のユリア・ティモシェンコがプーチンのことを「ヴァロージャ」と呼ぶ場面があるのですが、これはあの漫画においてはプーチンとティモシェンコが友人として親密な関係であったことを示しているのです。
そして最後に恋人や夫婦の場合は、ヴァロージャがさらに進化して「ヴォロージェニカ」となります。
このようにロシア語では関係性によって、名前の呼び方はかなり明確に区別されているのです。
ですので、私たちがプーチン大統領のことを「ヴォロージェニカ」と呼ぼうものなら、その場でロシア連邦保安庁に取り押さえられかねません。プーチン大統領を呼ぶ機会があったら、きちんとウラジーミル・ウラジーミロヴィチと呼ぶように注意しましょう。
呼び方で変わる関係性
日本ではロシアほど名前の呼び方に明確なルールはございませんが、それでも関係性によってある程度呼び方が変わるのは間違いありません。
一般的に公式の場では相手の苗字を呼ぶため、下の名前を呼ぶのは親密な関係の証でもあるのです。
それでは今回のご質問を「男性目線」で考えてみましょう。
彼はご質問者さまとの関係を進展させたくて、名前の呼び方を変えるようにお願いしました。
しかしご質問者さまは名前の呼び方を変えませんでした。これは彼の目線から考えると「まだ名前で呼ぶような関係ではない」と拒絶をされているように感じたことと思います。
彼がよそよそしくなったのはまさにこのため。彼が「親密になろう」というメッセージを送ったにも関わらず、ご質問者さまはそれを拒絶してしまったのです。
ある意味で告白に失敗したのと変わりません。彼の目線でいえば、よそよそしい態度を取ったのはご質問者さまのほうなのです。
自分なりの呼び方ではダメ
ご質問者さまは、会社の上司を呼び捨てで呼ぶでしょうか?
たとえば私が上司だったとして、部下が私を「上野! おはようございます」なんて呼ぶことは絶対にないでしょう。そんなことをしたらマナーのなっていない人間という烙印を押されるのは間違いありません。
呼び方は関係性を表す重要な言葉なのです。
古典の授業で尊敬語や謙譲語などを勉強したかと思いますが、あれも同じ。ロシア人がプーチン大統領のことをウラジーミル・ウラジーミロヴィチと呼ぶように、自分の好き嫌いで選んではいけない部分があるのは間違いありません。
もちろん恋人関係の場合であれば厳密なルールはそこまで御座いませんが、特に今回のように相手がそれを望んでいる場合、自分が好きな呼び方をすればいいというものでもないでしょう。
呼び方は2人の関係性を示す重要な指標なのです。