今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
アリのうた
今週のかに座は、なんでもないような言葉がそのまま詩になっていくような星回り。
「秋風や酒肆に詩うたう漁者樵者」(与謝蕪村)という句は、漢文調にしてわざと全体を「絵」のように引き立てている一句。掲句に詠われた「漁者樵者」は単なる漁師や木こりではなく、それぞれ隠者の風貌をもち、また詩人の相をそなえているように見えます。
作者の生きた江戸時代当時は、漢文調が格調高いものとされていましたが、作者はそれを逆手にとって、社会のなかで一番虐げられているはずの人たちをこそ格調高いものとして表現してみせたのです。
今週のあなたもまた、自分が大切にしていきたい日常風景や記憶の光景を、自身のバックグラウンドとして改めて脳裏に刻んでいくといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
場所への頽落(たいらく)
今週のしし座は、湧き出るように現れたもう一つの時空の裂け目を前に、懐かしさを感じていくような星回り。
日本では近代から現代に時代が進むにしたがって、詩人をそれっぽい美辞麗句を重ねるだけの「ポエマー」へと貶めてきました。しかし一部の人々、例えば哲学者の池田晶子は、詩人とは「ことばと宇宙とが直結していることを本能的に察知している者を言う」と書いています。
彼女にとって「詩人」とは変わった属性の人間というよりも、何ものかが生起してくる一つの「場所」。詩作やその朗読とは、新たな宇宙をそこから展開していくことであり、そういう「場所」になりきってこそ、詩人と呼ばれるにふさわしいと考えていたのです。
今週のあなたもまた、どんな宇宙を切り開いていけるか、またどれだけ「場所」になりきれるかが問われていくことになるでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
体感を味わう
今週のおとめ座は、目に見えてなかった感情が体感とともに顕在化してくるような星回り。
「病廊の不意に岐るる秋の冷え」(安松伸布代)という句では、病院の廊下で不意に「秋冷え」が訪れる様子が詠まれています。この場合、入院している患者というより、見舞客の心理として捉えた方が意図が汲みとりやすいでしょう。
入院している相手の病状や経過への不安が湧いてきたのか、あるいはもっと別の極私的な思いや記憶が起き上がってきてしまったのか。いずれにせよ、その場所に立たなければきっと味わうことはなかったであろう思いが、心臓の鼓動の高まりとともに、作者の心中にまざまざと呼び覚まされたのではないでしょうか。
今週のあなたもまた、頭でひねり出すのではない仕方で、自然と湧いてきた予感や思いをしっかりと引き受けていくことが大切になっていくはずです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
夢と風呂
今週のてんびん座は、新しい言葉への切り替えをみずからに促していくような星回り。
「ふわふわ」というオノマトペは心地よい解放感を感じさせると同時に、根づきもしなければ着地もしていないという根源的な不安をも感じさせます。精神科医の新宮一成は、実はこうした不安定こそが言葉の根源にあり、人が繰り返し空を飛ぶ夢を見るのも、人が言葉を話すからなのだと言います。
人は人生の新しいステージへの適合がうまくできず、焦ったり、もがいたり、塞いだりするごとに、かつて赤ん坊から人間になった時にあれほどうまくできたではないか、話せるようになったじゃないかと、夢を通じて自分に言い聞かせているという訳です。
今週のあなたもまた、そんな自分が自分以外のものになっていく様を外側から眺めているような、不安定な新しさの感覚を味わっていくことになるでしょう。